ベネデッタ/私の言葉は神の言葉

人間ドラマ
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ベネデッタ

Benedetta/監督:ポール・ヴァーホーヴェン/2021年/フランス

マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年2月17日です。実話が元になっているから伝記映画のカテゴリーにしました。R18。

あらすじ:修道院での出来事。

ネタバレはありません。

6歳で修道院に入った少女、ベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)は、たびたびイエス・キリストの幻覚を見ていた。あることがきっかけになり、ベネデッタは痛みを伴う幻覚を見るようになる。それを治療するため、薬としてケシの絞り汁を与えられて……というお話。

ナンスプロイテーション映画ですね。私はこのジャンルを観るのは初めてです。知識として知っているのは『肉体の悪魔』(1971年)だけかな。ナンスプロイテーション映画の説明は、よく理解していていない私が自分の言葉でするよりも、知っている人の言葉の方が正確だろうから引用します。Wikipediaのこの項目は批評家の北村紗衣さんが作られたんですよね。一方的な信頼感。

ナンスプロイテーション (英語: Nunsploitation) は、尼僧や女子修道院を主題とするエクスプロイテーション映画のサブジャンルである。性的に抑圧された修道女たちが敬虔な行動を捨てて隠れて性行為にふけったり、暴力や陰謀などにかかわったり、悪魔に取り憑かれたりするような様子を描く作品が多く、セクスプロイテーション映画やホラー映画に近いものもある。1970年代にヨーロッパで盛んに作られた。

引用元:ナンスプロイテーション – Wikipedia

ケシの絞り汁(アヘン)が出てきたときに、あ、これはもしかしてアヘン中毒になってしまって大変とかいう話なのかなって思ったら違ったよ。私が映画を観ながら先の展開を想像するとき、だいたいそれは良い意味で裏切られて、私なんかが思いも寄らない方向に行くんだよね。

ベネデッタの身体にはいろいろな奇跡が起きて、でも、徹頭徹尾自作自演感がものすごい。ものすごいんだが、奇跡をどうやって自演しているのかは憶測でしか語られないし、異を唱える人も「多分自演だと思うんですが実際に見てないからなんとも……」と、頼りなさげなの。こういうとき誰よりも強いのは堂々としている人だと思っていて。ベネデッタはとっても堂々と嘘をつくので、周りも「そっか〜、納得……! ……?」みたいになる。

ペストが流行していた17世紀イタリアの話で、昔の人は賢くなかったとか言うわけではないにせよ、閉ざされた世界である修道院で起きていることを完全に客観視出来ている人がいなかった。修道院長(シャーロット・ランプリング)とその娘はベネデッタを疑いの目で見ているけれども、ベネデッタが「キリストが私に言っていたことをそのまま言います!!」みたいに言い出すのを止めることが出来なかった。なんか「キリストを持ちだしてそういうこと言われたら、こっちはもう手も足も出ませんねえ」ってかんじ。

ベネデッタは無敵なんだよね。どんどん無敵になっていく。信仰心だよ、問題なのは。いや、信仰心があるのはけっこうなことだけど、なんて言うのかな、他人の信仰心を自分のために利用するのはいかがなものかな。いかがなものかなとは思うが、ベネデッタは、自分が嘘をついていると認識していないように見えるんだよね。昔よくTVでやっていた、目の中からガラスが出てくるインドの少女とか血の涙を流す少年とかさ、完全にインチキだったし、親が子供を金儲けのために利用しているひどい虐待の例だと思うけど、そういうのをちょっと思い出した。いや違うな〜、なんだろう、ああ、あまり名前を出したくない有名人が脳裏をよぎっていったよ。誰かが亡くなるとすぐ自分に憑依させる人ね。

私、ベネデッタは病気だと思う。でも、自分の理解の範疇を超えている人をすぐに病気だと言うのは危険なことなので、思うだけで、断言はしないよ。私は医師ではないし、医師であったとしても、人のことをあれこれ言うのは良くないもんね。ただ、今回は映画の話をしているので、勝手に言います。ベネデッタは作為症だと思う。

作為症(虚偽性障害とも呼ばれます)では、明らかな外的要因がない状況で、身体症状や精神症状があるふりをしたり、それらの症状を作り出したりします。
(略)
自らに負わせる作為症は、以前はミュンヒハウゼン症候群と呼ばれていました。

引用元:自らに負わせる作為症 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版

病気だからどうのじゃなくて、名前がついていると安心するでしょ。

ところで、ここまで書いてきて意図的でなく伏せてしまった要素に同性愛があります。これは非常に重要な要素なんだけど、他に書くことがたくさんありすぎて触れてなかったというのと、ここに触れるとネタバレになりそうだからあんまり言えないっていうのがあるのね。ロシアでは、「冒涜的な内容で、同性愛の宣伝である」とみなされて公開が中止になったようです。今作はだいぶ物議をかもしたらしいが、その理由がある「物」で、「まさか、やらないだろうな」って思ってたらやったからめっちゃ笑った(伏せすぎて何も伝わらない……)。あと、レイプシーンがあるので苦手な人は気をつけてください。

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