ケイコ 目を澄ませて/その胸に秘めたものは、何か

人間ドラマ
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ケイコ 目を澄ませて

監督:三宅唱/2022年/日本

マスコミ試写で鑑賞。観たのは11月6日でした。感想はTwitterに書いたからいいかなと思っていましたが、なんだか時間が経つにつれて、しみじみ良かったなと思うようになったので、少し書き留めておきます。

あらすじ:耳の聴こえないプロボクサーがいました。

※ストーリー上のネタバレはありません。構成については書いています。

生まれつき聴覚障害があるケイコ(岸井ゆきの)の物語です。実在人物をモデルにしていますが、実際とは時代が変えられています。

先日、NHKの番組で、ろう者の若者が渋谷で街頭インタビューをするようすが流れていたんですね。「あなたはろう者を知っていますか」「どんなふうに思っていますか」とか質問していて、聞かれた方は、なんだかどこか遠慮しているような、気まずいようなようすに見えました。そういえば、タイトルは忘れましたが、耳の聴こえない男の子が目も見えなくなっていく映画がありますね。もう上映しているのか、わからないです、予告だけ見て、ちょっと感動ポルノっぽく思えてしまい、すぐ忘れてしまいました。わかる方、教えてください。それから今日はTwitterで『silent』というドラマが炎上していましたね。こちらも詳しくは追っていないので、なんとも言えないです。あとで追います。

と、立て続けに、ろう者についてのあれこれが私の中に生まれたため、『ケイコ 目を澄ませて』について少し書こうと思ったのです。


「3ヶ月前に岸井さんと会った」というのはクランクインの3ヶ月前で、監督もボクシングを一緒に習ったそうです。私は1年前からキックボクシングをやっていて、ボクシングとはまた違いますしダイエット目的の軽いやつなんですけど、他の人の動きを見慣れて来たので、自分はともかくとして、やっぱり上手い人の上手さがちょっとわかるようにはなるんですね。今作は試合シーンもありますし、動きに説得力がないと成立しないと思うんですよ。岸井ゆきのさんはそこをクリアしているように見えて(劇中では、遅い遅いと言われていますが)、その時点で、もう100点なわけです。


これね、あとになってから思った。コミュニケーションとしての手話と筆談があり、特に、聴こえに問題のない人と話す時、彼女は雄弁ではないんです。最小限の物事しか伝えていないように思える。それが、彼女の本心や、今までどう考えてきたのかがわかるとき、ああ、この人は、たくさん言葉を持っていたんだ、ただそれを表に出さない(もしくは、出せない)だけなんだ、と気づくわけです。

今作に劇伴はありません。それは、音楽によって観客の感情をコントロールしないようにしたのかなと思います。同時に、この映画を観る、ろう者を想定しているのだとも思います。つまり、音がなくても観られる映画になっているんです。手話のシーンは、必要に応じて字幕が出ます。ろう者どうしの手話に字幕はつきません。この映画に出てくるろう者の方は、実際のろう者です。彼女たちはテイクを重ねるごとにだんだん手話のスピードが落ちていってしまい、監督から「いつもどおりに話してください」と指示された、とプレスで読みました(手元にプレスがないので、正確に一言一句このままの発言ではないということはご理解ください)。監督が、本当に丁寧に描こうとしていることがよくわかるし、感動ポルノでもないし、そうですね、今年観た邦画の中ではかなり上位に来そうです。聴こえる人にも聴こえない人にも観てほしい映画だなと思いますね。

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