そして僕は途方に暮れる/君が心に決めたことだから

人間ドラマ
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そして僕は途方に暮れる

監督:三浦大輔/2022年/日本

※この記事は2022年10月15日にこちら(そして僕は途方に暮れる/君が心に決めたことだから | 映画感想 * FRAGILE)に書いたものとほぼ同じです。公開まで2週間を切ったので再掲します。最後にネタバレを書き足しています。

試写で鑑賞。 Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔くんのことは、今作で初めて知りました。公開は2023年1月13日。

あらすじ:とにかく逃げます。

ネタバレしています。 本文中、ネタバレの前には注意書きをしています。ストーリー上のネタバレはありません。ラストシーンでの藤ヶ谷太輔くんの演技について触れています。

主人公である菅原裕一役のKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔くんは、今作の元となった舞台にも主演で出ていたそうで、演技がめちゃくちゃ仕上がってました。特に、セリフがないときの表情がすごくうまかったですね。舞台から引き続き続投ということで、役がきっちり身に入っているんだな〜と。主人公がまじでクズすぎて、まったく共感出来ないんだけど、「ここまでひどくはないが、こういう人いるよなあ」と思わせるかんじも◎。

主人公は、恋人である鈴木里美(前田敦子)のヒモみたいな存在で(前田敦子さんは『もっと超越した所へ。』(2022年)に引き続き、ヒモを飼っちゃっててなんか面白かった)、ある出来事がきっかけになって、逃げちゃうんですよ。文字通り、荷物まとめて逃げる。恋人との話し合いから逃げる。わあ、ずるいねえ。

この映画、「逃げて、逃げて、逃げまくる――、人生を賭けた逃避劇。」というキャッチコピーがついていますが、何者かから逃げる、追われて逃げるという意味でなく、現実逃避として逃げるんですよ。逃げた先で、また人に寄生して、縁を切って、また逃げて。ちょっとでもストレスかかるとすぐ逃げる主人公は、『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジを見習ったほうがいいよ〜。逃げてばっかりじゃダメなんだよ。成長しなさいよ。

主人公の、人との関わりはスマホだけになっちゃうのね。スマホなくしたら全部終わる、っていうところまでいってる。人間関係の希薄さがわかるかんじある。

行き詰まった主人公がターゲットにしようとしていた後輩くん(野村周平)は、キラキラした目で、主人公を突き放すようなセリフをサラッと言うんですわ。そんな後輩の様子を見た主人公は、あ、こいつのところに転がり込めないんだな、ってわかっちゃう。ここ笑いましたね。藤ヶ谷太輔くんは、このシーンで特に言葉を発しないんだけど、わかっちゃう感がめちゃくちゃ出てて、本当に演技がうまいなって。後輩くんのような人がもつ純真さは、時に武器となるんだなとか思ったりね。主人公は後輩くんのこと舐めてるように見えるけど、後輩くんが全部わかっててそういうことを言ったのだとすれば、めちゃくちゃうまいやり方だよね。なかなか食えないやつかもしれません。

主人公の親友である今井伸二(中尾明慶)の演技は安定した上手さがあった。地に足がついている演技って感じする。振る舞い方が若干、アレ? 何だこの人? って思うところあって。それの理由がわかったとき、狡猾さと良い人ぶってる理由も同時にわかるので、やられた〜ってなったよ。ハマり役だと思うな。豊川悦司のクズぶりもひどくて、むしろ安心して観られたかんじ。豊川悦司がクズを演じているのは『あちらにいる鬼』(2022年)もそうだったので、なんかいろいろ私の中で繋がっちゃった。これはねおすすめですね。ぜひ。藤ヶ谷太輔くんのとんでもない姿も観られて、私、映画で演者のこんな姿観るのが初めてだったから、すごくびっくりした!

※以下ネタバレを含みます。ストーリー上のネタバレはありません。ラストシーンでの藤ヶ谷太輔くんの演技について触れています。

すごくびっくりしたのは、ラストシーンでの藤ヶ谷太輔くんの鼻水です。すごい長さの鼻水が垂れるようすを真正面から映しているんですね。鼻水って、本気で泣かないと出ないじゃないですか。演技で、涙は出るけど、鼻水は出ない。だからこのシーンで藤ヶ谷太輔くんは本気で泣いているんですよね。でも、慟哭しているわけではない。静かに泣いている(なんなら涙は出ていない)んですね。他にも、涙をこらえているような、心を動かされつつもまだ涙が出ない状態のときのようなシーンで、喉仏が痙攣したように上下に動くんです。それは演じてやれないことではないだろうし、監督からそういう指示があったのかもしれないけれど、とても自然で説得力のある姿になっていると思うのです。

仮に本当に泣いていたとして、そこまで役に入り込めることはとても素晴らしいと思うし、演技で鼻水を流したり喉仏を痙攣させていたりするならば、それはすごい演技力だと思います。こういう細かな部分から、藤ヶ谷太輔くんがジャニーズ事務所のイケメンアイドルという枠にとどまらない活躍をされているのだろうなと容易に想像がつくわけです。映画で主演を演じるのは今回が初めてではないとわかって納得でした。今後に期待ができる俳優さんだなと思います。

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