The Son/息子/輝く未来があるはずなのに

人間ドラマ
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The Son/息子

The Son/監督:フロリアン・ゼレール/2022年/イギリス

©THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年3月17日です。


三部作と知っておどろいているようす。しかもアンソニー・ホプキンスヒュー・ジャックマンの父親役なんですよね。今作のアンソニー・ホプキンスは『ファーザー』(2020年)のアンソニー・ホプキンスとは別人です。
ファーザー』の感想はこちら。
ファーザー/喜びも悲しみも、思い出さえも | 映画感想 * FRAGILE

あらすじ:息子の様子がおかしい。

ネタバレはありません。

ヒュー・ジャックマンは、前妻ケイト(ローラ・ダーン)との間に高校生の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)を持っています。現在の妻ベス(ヴァネッサ・カービー)との間には、まだ幼い息子がいます。ニコラスの調子が悪いので話を聞きに行くと、彼は「父さんと暮らしたい、母さんはもう無理」と言い出して……。

結局、ヒュー・ジャックマンはニコラスと暮らすことを選ぶわけです。ニコラスはとても不安定な子供で、ベスに対して冷たい態度を取ったりするんですね。乳飲み子を抱えているうえに、血のつながらない難しい年頃の男の子が突然同居するとか、ベスはそうとう大変だと思います。私だったら「出ていけ」って言っちゃうね。

ヒュー・ジャックマンは、ケイトと婚姻関係にあったとき、ベスに出会って家を出ていってしまったみたい。心のどこかでそれを根に持っているケイトはヒュー・ジャックマンに対して「ニコラスが小さい頃は幸せだったのに……」とか言ってくるわけです。ニコラスはニコラスで、ベスに「父さんと出会ったとき、妻子持ちだって知ってたのにやめなかったの? 母さんはひどく落ち込んでたけど?」みたいなことを言って追い詰めてしまうのね。嫌な子供だなあと思うけれど、そういう態度を取らなければ、自分の現在の状況に納得できなかったんだろうなって思うのよ。

ニコラスには自傷癖があって、それを知ったヒュー・ジャックマンは彼を咎めるんですよ。これね自傷癖のある人にしかわからないかもだけど(そして自傷癖があったからわかるというわけじゃないけど)、自分を大切にしろとか、言われれば言われるほど世の中が嫌になっていって、自傷がやめられなくなるんですよね。なんでそんなことするんだと聞かれたってちゃんと答えられない。「ちゃんと」というのは「相手にわかるように」っていう意味ね。

私は結構いい年になるまで自傷癖が治らなくて、なんでそんなことするのとか、その程度じゃ死ねないよとか、いろいろ言われて来た。今はもう、そういう問いに対する答えって1つしかなくって「理由はわからないし、死にたいわけでも、構ってほしいわけでもない」なの。未だに、なんで消えない傷跡を残してしまったのかはわからない。あるいは、わかるように話せたとして、こういうことに対してずけずけと聞いてくる人の望むような答えは返せない。ニコラスと父との間にどうにもならない断絶があったのと同じことだと思うんだよね。

私は人の親ではないから実感としてはまったくないのだけれど、愛する者、血を分けた者が自分を傷つけていたら、と想像すると、本当にやめてほしいと思うし、やめてくれって言うと思うな。さきに書いた自分の気持ちとは矛盾しちゃうけど。こういうとき、気取ったような言葉って出ないものだよね。なんだか、ニコラスの姿に自分を重ねてしまって、とてもつらかったです。親孝行しないとな……。

ヒュー・ジャックマンはいい俳優だし、今作でも良かったんだけど、ビリー・クラダップのほうがあってたかも? とは思いました。三部作、父、息子、ときたら次はきっと母だよね。重いの、頼みますよ!

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