ザ・ホエール/神はいないと知っていた

人間ドラマ
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ザ・ホエール

The Whale/監督:ダーレン・アロノフスキー/2022年/アメリカ

TOHOシネマズ新宿 スクリーン1 D-1で鑑賞。86席しかないスクリーンでした……ブレンダン・フレイザーが第95回アカデミー賞で主演男優賞を受賞したというのに……。うーんまあ、どちらかというとミニシアター系の映画ではあるかな……。

あらすじ:超肥満体です。

ネタバレはありません。

ツイートまとめていきます。めちゃくちゃ泣いたわ……泣きすぎて、受け取りきれないものがあったと思う。冷静さを欠いている。


私はダーレン・アロノフスキーが好きで、中でも『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年)が一番好きですね。今回、観る前から「ダーレン・アロノフスキー監督作の中で『ザ・ホエール』を2番目に好きになるはず」とか言ってました、予告も観てなかったのにね。


登場人物たちが全員、傷ついているんです。人として最低なことをする登場人物も、めちゃくちゃに傷ついている。ブレンダン・フレイザーを救おうとする人も、傷ついた末にああいうことをする。ブレンダン・フレイザーの友人であるホン・チャウが、なぜ献身的に彼に尽くすのかがわかるとき、どうしようもなく涙が出てきて、ケアする者とされる者以上の事情があることがわかるんだよね。

失ったものしかなくて、みんな過去を引きずる。「あの時なぜ」と罵り、「あの時は良かった」と言う。ずっとホン・チャウに謝っているブレンダン・フレイザーが、何故かサマンサ・モートンからは「ポジティブ」と言われる。ブレンダン・フレイザーサマンサ・モートンを嫌いになったわけではないだろうし、罪悪感を抱いているのは確か。だから、つとめて明るく前向きに振る舞おうとしているのかもしれない。

『人に見せる顔』とは何か。ブレンダン・フレイザーは大学のオンライン講師をしていて、授業中には自分の姿を生徒に見せない。異常だと解っているから。270キロを超える肥満は病気なのに、醜くてだらしない不気味な生き物扱いをされてしまう。ブレンダン・フレイザーが、彼にとって最悪なことをする人たちの幸せを、それでも願うのはなぜか。救えなかった魂が、そこにあるからだ。

ブレンダン・フレイザーは、人の正直なところを見ようとする。それが罵りの言葉であったとしても、正直であるものを美しいと受け取る感性のある人である。巨体を揺らし、補助器具を使って歩こうとする姿に滑稽さを感じる人もいると思うけれど、彼は繊細で壊れやすい心の持ち主だ。

恒例の、自分語りをしたい。私は今、とても太っていて、昔の知り合いに会いたくない。55キロくらいだったとき、20代のころ(40キロ前後だったころ)の友達に会ったら「ミノワさん、ちょっと太った」と言われて、それ以来、その子には会ってない。会いたくない。今の私は、身長180センチの男性が「痩せないとまずいな」と思うくらいの体重を抱えている。私は身長が162センチしかないのに。

妹は私に言った。「おねえちゃんは、心療内科の薬のせいで太ったんだよね。ウチに肥満の遺伝子ないもん」と。
私の家族は全員やせていて、私はそのなかでも特に細かった。何もしなくても夏は7キロ痩せ、冬に7キロ太っていた。体重の増減が激しいタイプではあったが、痩せたくなくても勝手に痩せていた。拒食症も抱えていたからだ。成人してからの最低体重は37キロだった。

そんなガリガリだった私は、ある年を境に急に太りだし、自分で認識している自分の姿と、鏡に映る自分の姿との間に乖離がある。いくらボディポジティブとか言われても、痩せている自分こそが自分の本来の姿だと認識している私は、太っている自分を到底うけいれられない。ヨガに通って1年で10キロ痩せ、その後、職が変わったためにヨガに行けなくなり10キロ太った。そして無職になったことをきっかけにキックボクシングを始める。なぜ、格闘技に興味のない私がキックボクシングを選んだかというと、ヨガで10キロ落ちたんだから、もっと運動量の多いキックボクシングだったら、もっと痩せられるだろうと思ったからだ。ところが、キックボクシングを始めて1年で、5キロ太ることになる。筋肉だとしても、増え過ぎではないか。どうしてこうなるんだ。

がんばっているのに。これ以上がんばれないのに。食事制限で痩せることは無理だと思っているから、食事にはいちおう気をつけてはいるが、ブロッコリーとささみしか食べない、みたいなダイエットはしていない。動くしかない。でも、太っているせいで膝が痛むし、キックボクシングのときに軸足となる左足は特にすぐ痛くなる。私の体重を、私の体が支えきれていないのだ。

どうやって痩せたらいいのか、まったくわからない。醜く太り、歳も取り、自信をなくしているため、美しかった頃の写真や、ゴリゴリに加工した自撮りをSNSにアップしては、すぐ消すのだ。完全に、自分というものがわからなくなっている。人の精神は、見た目にも左右されるのではないかと思うこともある。こんなはずじゃなかった、という思いを抱えている。

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