このろくでもない世界で/窮鼠猫を噛む

クライム
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このろくでもない世界で

화란/HOPELESS/監督:キム・チャンフン/2023年/韓国

マスコミ試写で鑑賞。2024年7月26日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。
カンヌ国際映画祭&第28回釜山国際映画祭にも公式出品しています。キム・チャンフン監督は、これが初の長編監督作品です。初監督でこれを提出できるなら、キャリアを積んだら凄そうだなと思いましたよ。

あらすじ:親に殴られていました。

ネタバレはありません。

継父からの激しいDVに怯えながら暮らすヨンギュ(ホン・サビン)は、義理の妹であるハヤン(キム・ヒョンソ)を守るために暴力沙汰を起こします。


18歳のヨンギュは高校を停学になり、示談金を求められることに。バイト先もクビになってしまったヨンギュは、地元の犯罪組織に助けを求め、自身も犯罪に手を染めていきます。

闇バイトですね! 韓国でも闇バイトは問題になっているみたいですし! と一瞬思いましたが、闇バイトどころかガッツリ犯罪でした。いや闇バイトも犯罪ですが……。どちらかというと『闇金ウシジマくん』の世界です。

ヨンギュは、兄貴分であるチゴン(ソン・ジュンギ)にだんだん認められていき、それと反比例するように生活がどんどん荒んでいきます。チゴンがヨンギュに「腹は減ったか」と聞くので、どこか食べに連れて行くのかな? と思ったら、人を傷つけるためのナイフを使ってその場で魚をさばきだしたので、大変かっこいいと思いました。この映画の中で私が一番好きなシーンですね。かっこいい。

池松壮亮にちょっと似た人がいて、だいぶ乱暴者で良かったのですが、劇中で名前を呼ばれるシーンがあったかどうか定かでなく、名前を調べられませんでした。韓国の俳優は作品によって外見がまったく違うように見えるし、映画の中では普段の姿からまったく想像できない風貌になったりするので、すごくいいと思うんですよね。汚い役のときは本当に汚くて、迫力あるなあって思って普段の写真見ると、小綺麗で笑顔が素敵な人だったりするから。いや、俳優なので役によって見た目が違うのは当たり前ですし、私がなかなか韓国俳優を覚えられないせいで毎回驚いたりするというだけなのもありますが……。

暴力から逃げた先でも暴力が待っているような世界でヨンギュがまっとうに暮らせるはずないんですよね。ボスから命令されたら何でもやるしかない、それがたとえ自身を傷つけるようなことであっても、やらなければならない。誰かが優しくしてくれるわけでも、守ってくれるわけでもないんです。ヨンギュだけのことに限定すれば(あんまり良い言い方ではないですが)親さえまともなら、こうはならなかったんです。

チゴンにも凄惨な過去があり、明確に劇中で語られます。私はヨンギュの物語よりもチゴンの物語の方が興味がわきました。また、お金を借りすぎて首が回らなくなっているおじさんもいて、こちらの物語にも興味がわきましたね。各キャラクターの過去をきちんと決めていることの証左だと思うし、たぶん池松壮亮似の彼にもいろんな事情がきっちり与えられていることでしょう。

私は最近、韓国の社会派スリラーとノワールを避けていて(自分にはあんまり合わないことがわかってきたので)、この映画もスルーしようかなって思ったのですが、観て良かったです。なお、原題の『화란』は「オランダ」という意味で、これは映画を観たらどういうことかわかります。

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