ロイヤルホテル/冗談だから笑えよ

スリラー
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ロイヤルホテル

The Royal Hotel/監督:キティ・グリーン/2023年/オーストラリア

マスコミ試写で鑑賞。2024年7月26日、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
もしかしたらもっと前からかもしれませんが、『ミッドサマー』(2019年)の「フェスティバル・スリラー」以来、今まで映画のジャンルとして「なかった」ものを作り出してませんか? 今作は「フェミニスト・スリラー」と銘打たれています。

あらすじ:田舎のパブで嫌な目に遭います。

ネタバレはありません。

オーストラリア旅行中にカードが止まり現金もなくなってしまったハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)は、鉱山地区にあるパブで働くことになります。


「鉱山地区なので男性に注目されるかも」とワーキングホリデーの担当者は言いました。ふたりはきっと大したことではないだろうと、たかをくくっていたのでしょう。高賃金に惹かれ、彼女たちは周りになにもない田舎のパブへ行くのでした。

パブの客たちは、彼女らにさまざまな嫌がらせをしてきます。でも、それらすべては彼らなりの「冗談」であり、その「冗談」に慣れた女は環境に適応できてしまうんです。でもね、冗談でも、言って良いことと悪いことがありますし、相手が不快だと感じていたら、つまらない冗談はすぐにやめるべきです。メス犬って言うな! 外国人にはわからない性的な言葉を言わせようとするな! おい、そこのおばさん! 一緒になってからかってくんじゃねーよ! っていうか、このバイト、本当に給料もらえるんですかね?

……という、ハンナの苛立ちとストレスが手に取るようにわかりました。私は一時期、ゴールデン街のバーで働いていたことがあるため、その時のことをなんとなく思い出したりしてね、と、言うほど酷いお客さんっていなかったです。いや本当に。私の容姿をからかったり、揚げ足を取ったり、私の行動を見てニヤニヤ笑ったりする程度でした。

ハンナをからかってくる男性客の中にも、いい人(に見える)はいます。話せばわかるし、こちらを楽しくさせてくれる。でもさ、みんなそうじゃない? みんな、良い面も悪い面もあるよ。良い面をちょっと見せてきたからって、「でもこの人、アルコール入ると”ああなる”んだよな……」ってなるじゃないですか? 

なお、客の一人をヒューゴ・ウィーヴィングが演じていますが、まったく気づきませんでした……。オーストラリアでヒューゴ・ウィーヴィングと言ったら『プリシラ』(1994年)ですが、これも「田舎に行くと嫌がらせとかされて怖い」っていう映画でした。いやもっと違う意味もありますが、ざっくり説明するとそうなる。

いままで、「冗談だから」でどれくらい多くの人びとが嫌な思いをしてきたんだろうと、世界に思いを馳せたりしましたね。酒が悪いんじゃないの。まあ、酒はそこそこ悪いけど、悪いのは、酒を飲んだ時に出てきてしまう本性なんだよね。そして、酔っていなくても、相手が自分の言動で嫌な思いをしたことがわからない人って、けっこういるんだと思います。まずは自分がそういう言動を取っていないか省みることをして、その後で、他の「わからない人」に注意をしていくのがいいんじゃないでしょうか。

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