壁越しの彼女
빈틈없는 사이/My Worst Neighbour/監督:イ・ウチョル/2023年/韓国
マスコミ試写で鑑賞。2024年8月23日新宿武蔵野館ほか順次公開。
あらすじ:壁が薄くて隣人がうるさい。
※ネタバレはありません。
歌手になる夢のため、そしていつか結婚するために引っ越してきたスンジン(イ・ジフン)は、引越し初日から、どこからともなく聞こえてくる女の声に悩まされていました。
女の声の正体は、隣人であるラニ(ハン・スンヨン)。今まで、ありとあらゆる方法で隣人を追い出してきたラニでしたが……。
『アンダー・ユア・ベッド』(2023年)のイ・ジフンがスンジンを、人気グループ「KARA」のメンバー、ハン・スンヨンがラニを演じています。
ラニは造型をやっています。ソフビの原型みたいなのを作っているのかな。原型を作って型を取るのかと思っていたらいきなり塗装したから違うのか……リューターで削っているのでエポキシ樹脂か石粉粘土なのかなあと思ったら油粘土っぽいものを練ったりもしていて、これ本当にどうでもいいのにすごく気になってしまいます。結構ポップな作風っぽくて、絵も描いているし、もっと見せて〜! 造型周りのリアリティは、この映画のメインターゲットである少女たちにはどうでもいいことかなと思いますので、別に私は重箱の隅をつつきたいわけではありません。
話がそれたので戻します。スンジンとラニは、大きい音を出すときには4時間ずつ交代で部屋を使うように取り決めるのでした。これで一件落着というわけではもちろんなくて……。
スンジンとラニの心の距離が縮まっていくと、彼らは壁越しに会話しながらお酒を飲んだり、料理をしたり、Googleストリートビューで散歩したりします。観ているこっちとしては、別にアメリカと韓国に住んでいるとかじゃないんだからさっさと会っちゃえよ! と思うわけですが、それができない理由がラニにはあるんですね。
物理的な距離よりも精神的な距離の方が相手を遠く感じるのだなと思います。惹かれ合っていく男女が顔を合わせず、本当のことも言えずに、それでも思いをつのらせていくようすは、上で私が書いたような「さっさと会っちゃえよ!」という、いささか乱暴な意見をはねのけるだけの重みがあると思いました。
たとえばネット上で知り合った人と、相手がどんな人かもわからないままにやり取りを続け、いつか頭の中に理想の相手を作り出して恋をしてしまうようなことって、たぶん多くあるんだと思います。そういう、現代的な恋愛を描いた映画だと思いました。この映画の場合は男女とも成人なので良いかなと思いますが、未成年の方におかれましては、くれぐれも、くれぐれも! ネットで知り合った顔のわからない人のことを信用しないでくださいね。