OKAは手ぶらでやってくる
監督:牧田敬祐/2024年/日本
マスコミ試写で鑑賞。公開は2025年5月10日です。
あらすじ:カンボジアでボランティアをします。
※ネタバレはありません。
東南アジアで「ひとりNGO」として活動し、2022年にこの世を去った栗本英世さんのドキュメンタリーです。
売春のため、親に売られてしまう女の子たちを助けることができず、病気のせいで亡くなっていく子どもたちを助けることができず、栗本さんは自分を責めたと言います。彼の絶望はどれほどであったでしょう。自分は偽善者ではないかと思い悩み、心を病んでいったという栗本さん。彼のボランティア活動は、もう、生き方なんですよね。助けた人たちに特別に感謝されたいわけでもないようです。感謝されるだけだったら、物乞いの子どもたちにお金をばらまけば済むことです。でも栗本さんはそうしなかった。なぜなら、お金をばらまけば子どもたちは喜ぶけれど、ずっとそうやって「人からお金をもらう」というだけのことしかできなくなります。だから栗本さんは子どもたちのために学校を作り、彼らの人生の最初の一歩としたのです。
私はそれほどたくさんのドキュメンタリー映画を観たわけではありませんが、今まで観た中でもトップクラスにしんどい映画です。栗本さんがなぜボランティアを始めたのか、という理由のところからもう、しんどい。簡単に説明すると、「自分の母親のような人を救いたい」ということなのですが、そのきっかけとなった出来事、そのとき彼がいくつだったのかなどを考えると、一生を変えてしまう出来事であったことには間違いがありません。
以前観た、1本のドキュメンタリー映画『世界のはしっこ、ちいさな教室』(2021年)のことを思い出します。この映画では、ブルキナファソ、シベリア、バングラデシュでそれぞれ、子どもたちに勉強を教えるべく奮闘する先生たちが描かれました。こちらの感想に書きましたが、私は今、東南アジア諸国の学校教育に関係する仕事をしています。でも、子どもたちに「なぜ」教育が必要なのかを深くは考えたことがありませんでした。『OKAは手ぶらでやってくる』には、栗本さんに救われた多くの命があり、人生がありました。あのときの子どもが成長して、次の命を救っていく。未来を担うというのは、こういうことなのでしょう。しんどい映像も多く流れる映画ですが、ぜひ観てほしいです。おすすめです。
最後に、2011年の記事を見つけたので引用します。
栗本さんは「安易にお金で支援をしないでほしい」と訴える。
鉄筋の大きな校舎を与えても、壊れた時に現地の人たちには直せない。しかし、村人を雇って一緒に作れば、技術を習得してもらうことができ、賃金も渡すことができる。
「こちらが良かれと思った行動が相手の自立を妨げることもある。本当のボランティアとは『友』になること。お金や物を与えればそれがなくなったときに彼らは困ります。お金や物を生みだす方法を一緒に考え、共に模索することが必要だと思います」。


