動物界/みんな今まで人間だった

SF
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動物界

Le regne animal/監督:トマ・カイエ/2023年/フランス・ベルギー合作

U-NEXTで鑑賞。ポスターが印象的で、劇場へ行くつもりでいましたが逃してしまいました。

あらすじ:動物に至る病。

ネタバレしています。注意書きはありません。

突然変異して動物になってしまう奇病が流行している近未来。彼ら”新生物”は凶暴性を持つため、施設に隔離されていました。フランソワ(ロマン・デュリス)の妻、ラナもその奇病に侵されています。ある日、事故により新生物たちが施設の外へ出てしまいました。フランソワは、息子エミール(ポール・キルシェ)とともにラナを探しますが……。

フランソワがラナ探しに必死になっている頃、エミールは自分の身体の異変に気づきます。背骨が変容し自転車の運転が難しくなり、次第に動物へと変化していくさまを感じていたエミールは、そのことをフランソワに打ち明けようとはしませんでした。森には、施設から逃げ出してしまったフィクス(トム・メルシエ)という、鳥になりかかっている男性がおり、エミールは彼と親しくなっていきます。

フランソワはラナの捜索中に「(ラナを)失うのは怖いが、会うのも怖い」とこぼし、涙を流しました。新生物になってしまうと、凶暴性を持つ以外にも言葉が通じなくなるためでしょうか。いくらラナを愛していても、外見のみならず内面も変化してしまっては、それは愛するラナとは別の生き物です。新生物が「獣」と呼ばれ差別されているのは、彼らを恐れている気持ちが悪い方に作用したからかと思います。先天性か後天性かの違いはありますが、ちょっと『X-MEN』シリーズみたいですよね。

後半まであまりたくさんの新生物が出てこないため、変容のバリエーションを観たいなと思っていたら、その要望に応えるかのように様々な新生物が顔見世してくれたのは良かったです。ありがたいですね、助かります。

フランソワは、まだ変容しきっていないエミールを警察に捕まらないよう森へ逃がします。追っ手がすぐそばまで近づいていたゆえの行動だと思うし、なにより映画的に、この物語を締めるにはこのラスト以外にないなと思う一方、もしかしたらフランソワは、完全体の新生物になったエミールを受け入れづらく、まだほとんど人間の状態で別れるほうが自分の心情的に良いと判断したのかなあとも思います。

結局こうして、フランソワもエミールもラナも独りになってしまい、フィクスが命を落としたことを思うと、主要な登場人物がほぼ全員悲しい最後を迎えるわけです。フィクスが生きてさえいればエミールも仲間が出来て良かったのにな……とは思いましたが、この悲しい展開が良い余韻を残すのだし、これしかなかったんですよね。おすすめです。

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