ヒポクラテスの盲点
監督:大西隼/2025年/日本
マスコミ試写で鑑賞。公開は2025年10月10日です。
あらすじ:新型コロナワクチンは実際どうだったのか。
※ネタバレはありません。
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種により後遺症が残ったり亡くなったりした人の遺族、当時のワクチン推進派等に話を聞いて110分にまとめたドキュメンタリーです。
私が悪いと思うんですけど、新型コロナワクチンに関するドキュメンタリーというだけで身構えてしまいます。それでも、「後遺症患者、遺族、当時のワクチン推進派など、多様な立場の人々の意見を多角的にとらえることで、科学とファクトに基づいた真実をつまびらかにしていく」(引用元:ヒポクラテスの盲点 : 作品情報・キャスト・あらすじ・動画 – 映画.com)と言われたら観るしかないなと思いまして、観ました。
第一印象としては「テレビだな」ということで、これは監督がもともとテレビの人なので当然と言えば当然だと思います。描き方としては非常にわかりやすく、問題への入りやすさはあります。ただ、初っ端から新型コロナワクチンに対して懐疑的な人ばかりに話を聞いているため、私はますます身構えることになりました。必死なのはわかるし、悪い人たちではないのもわかります。涙をこらえながら会見にのぞむ人を見て、悪い人だと思うことは難しいです。反ワクチン派の人たちには彼/彼女らなりの正義があるのだろうし、京都大学の名誉教授のような「りっぱな人」が「新型コロナワクチンには問題があるんじゃないか」と言っているのだから、それが事実なのだろうと受け取っているであろうことも非難しづらいです。その名誉教授が「(反ワクチンという言い方は)知性の崩壊 人間性の崩壊」と言ったとしてもです。どう考えても言い過ぎなんですが、それでもです。
この映画の資料に監督からのメッセージが掲載されていました。監督はコロナワクチンを3回接種し、ふとSNSを見て、コロナワクチンに関する論争が勃発していることを知りショックを受けたようです。なるほど。パラダイムシフトって基本的に1回しか起きないと私は思っていて、この監督にはSNSがそれだったんですね。同じような体験をした人は多そうです。一度価値観が転換してしまうと、もう一度元に戻ることは非常に難しいと思っています。
私は難しい顔をしながらこの映画を観たわけですが、当然、自分にバイアスがかかっていることは否定できません。2012年に『ピラミッド 5000年の嘘』というフランスのドキュメンタリー映画が公開されました。私はこの映画を観た時にとても怒ってしまって、こんなデタラメなものを劇場公開するべきではないと思いました。あれから13年経ち私も大人になったので、もう映画のことで怒ったりもしないですが、「大手メディアが殆ど報道しない、科学と事実に基づく《驚愕》ドキュメンタリー」という惹句はいかがかと思います。いや、逆にありがたいかもしれませんね。この映画が、届くべき人のもとに届けば良いなとは思います。非常に興味深かったです。


