Playground 校庭/子供の視線と負の連鎖

サスペンス
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Playground/校庭

Un monde/監督:ローラ・ワンデル/2021年/ベルギー

U-NEXTで鑑賞。

あらすじ:今日も学校でいじめられた。

ネタバレしています。

兄アベルと同じ学校に入学したノラは、内気な性格でなかなか友達ができません。それでもどうにかクラスメイト2人と仲良くなったノラでしたが、ある日アベルが大柄な少年から酷いいじめを受けているのを見てしまいます。

被写界深度の浅い映像が続き、ノラとアベルの姿のみを切り取っているようです。きょうだいの問題を至近距離からまっすぐ捉えているため没入感を生み、観ているこちらにまで逃げ場を与えないようにも見えます。また、彩度の低い、くすんだ色づかいが印象的です。天気もいつも薄曇りで、清々しさはまったくないですね。

自分で靴紐すら結べないノラは何をやっても失敗続きで、いつもどこか不安げな表情を浮かべています。それでも時折、クラスメイトとふざけているようすは子供らしい明るさがあり、少し安心できます。ただ問題はその明るさが一瞬で消え去ってしまうことでした。

さきに書いた通り、アベルは学校内で酷いいじめを受けています。報復を恐れて親や教師にはいじめ被害を隠しているため、ノラがいくら助けようとしてもうまくいきません。昼休みに校庭で堂々と行われるいじめについて、観ているこちらとしては、教師は早く気づくべきと思ってしまいますし、こちらの思い通りにいかない苛立ちも覚えます。ノラがもう少し状況をうまく大人に伝えることができたら、とも思うのですが、ノラのように非常に内気な子供だった私には、彼女がなぜ口をつぐんでしまうのかも理解できます。ノラの、不安でたまらないような表情や、静かに涙を流すようすは胸が締め付けられるようです。

そのようなつらい描写が続き最終的にどうなるかというと、アベルが他の少年をいじめる側になってしまうんです。いじめの行為がだいぶ酷いため、観ていてダメージを喰らいましたが、いじめられていた側がいじめる側になってしまうのはあまり珍しいことではないようです。

いじめられることによって心に傷を抱え自分は弱い立場の人間なんだと感じ、その不安や怒りが積もり積もって自分より更に弱い立場のものへ感情をぶつけて、自分は強いんだと一時的にでも実感したくなる、また、いじめられていたことで、いじめのやり方を学んでしまっているというのもあるでしょう。誰か信用できる大人が手を差し伸べる必要があるし、いじめる側にも充分な心のケアが必要なのではないでしょうか。

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