ダラス・バイヤーズクラブ/死の淵で彷徨う

人間ドラマ
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ダラス・バイヤーズクラブ

Dallas Buyers Club/監督:ジャン=マルク・ヴァレ/2013年/アメリカ

この記事は2014年に書いたダラス・バイヤーズクラブ/死の淵で彷徨う | 映画感想 * FRAGILEを修正し転載したものです。

ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1、F-11で鑑賞。マコノヒーが激ヤセということと、エイズの話だということしか知りませんでした。マシュー・マコノヒージャレッド・レトブラッドフォード・コックス(レトの恋人)も、痛々しいほど痩せていて、かげろうのようでした。差別問題を扱っているのかと思っていたらまったくちがいましたね。みなさん指摘されていることだと思いますが、字幕がややお上品というか、気を使いすぎているのか知らないが、FaggotもQueerもぜんぶ「ゲイ」って訳されているのはちょっと気になりました。

あらすじ:エイズになったので薬を売買します。

ネタバレはありません。

テキサスのカウボーイ、ロン(マシュー・マコノヒー)は、HIVに感染し、トランスセクシャルのレイヨン(ジャレッド・レト)と共に国内未認可のエイズ治療薬を売っていました。

ロンは自堕落で奔放な生活を送っているように思えるけれども、事故によって脚を潰された従業員に対する態度から、彼の中にある『命の捉え方』が透けて見えるんですね。同情などでなく、ほんらい誰しも持っているが普段は意識しない、生きることへの本能ゆえのもので。

物語が進むにつれ語られていく、彼やその周りの人たちの生への執着心、そして、ただ生きているだけでは意味がない、何かを成し遂げなければ、とまではいかないが、死んでいないだけの生き方はあまりにも悲惨だ、というところへと。

わたしたちはどんな病気であれ、罹患したときに、他人の意見を聞かなくてはなりません。その相手は専門知識を持っている医者になります。自分に何が起きているのか、これからどうしたらいいのかを、ひとの判断に委ねなければならない。果たしてその相手が「信用に値するかどうか」すらもはっきりとはわからぬまま、言うとおりにしていれば治るはずだ、と。

女医のイブ(ジェニファー・ガーナー)は、「ロレックスつけてるやつなんて信用できない」と言います。信用。ロンがひとりで治療薬を売ろうとしたとき、彼の言葉を信じる人はいませんでした。もともとロンがホモフォビアであるから、どうしても態度に出てしまっていたのでしょう。それでは信用は得られない。そこで、トランスセクシュアルのレイヨンが関わってくると、薬が売れるわけです。「彼(彼女)なら信用できる」、あまりよくない言い方をすれば、「こちら側の人間だ、だから信用できる」ということなのかなと、思います。

この物語は80年代を舞台にしていますから、おそらく当時は、エイズ=不治の病とされていたと思われます。後天的な不治の病にかかることは、未知の領域に脚を踏み込むことと同じです。いままでの人生ががらりと変わってしまう。濃厚に漂う死の臭いがつきまとい、逃れようにもままならない状況を生み出してしまうのです。ロンとレイヨンには、ずっと、死神が大鎌を首筋に当てている。いつ死んでもおかしくないような状況を、時にはコミカルに、また時にはこちらの胃をわし掴みにしてくるような残酷さをもって描き切る。その手法もさることながら、いうまでもないことではありますが、出演者の演技の素晴らしさにより、なにをもって生きるとするか、を突きつけられたように思います。

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