隣の影
Undir trénu/Under the Tree/監督:ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン/2017年/アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ合作
U-NEXTで鑑賞。誰かに勧められてマイリストに入れていたところ、もうすぐ配信が終了するので慌てて観ました。観終わってから、そういえばXでいろいろな人から、鑑賞後に落ち込むような映画を教えてほしいと募ったことがあったなと思い出しました。多分その時に教えていただいた1本です。もう、ものすごく感じの悪い映画で面白かったです。
あらすじ:木が邪魔です。
※ネタバレしています。
ある老夫婦が住んでいる家の庭に、大きな木がありました。隣に住む中年の夫婦は、日光浴をするポーチに影が落ちて邪魔だから木を切れと言います。お互い自分の言い分を譲らず、家の周りで起きる不審な出来事をすべて相手のせいにするように。
老夫婦にはウッギという名の息子がいましたが、何年も前から行方不明になっています。母親が泣きながらウッギの誕生日を祝うシーンでは、なにがあっても両親より先に死んではいけないなと思いました。死ぬまでいかなくても行動には注意を払わないと。私はよく家族のことを忘れて自分のやりたいように物事を進めてしまい、あとになって家族を悲しませることがあるので……。
と、老婦人に同情したあとの彼女の行動が驚くほど人道に反しており、それまで彼女に同情していた部分があるぶんよけいに腹が立つというか、腹が立つはちょっと違うな、とにかく信じられないものを観ました。今年今までに観た新作旧作の中で、今日までトップクラスに気分が悪かったのは『岬の兄妹』(2018年)でしたが、それを上回る胸糞の悪さがすごいです。とはいえジャンルが違うので比べるのは変だけどね。とにかく、老婦人役のエッダ・ビヨルグヴィンズドッテルは、脚本を読んだときにどう思ったのか知りたいです。この映画を観たすべての人からヘイトを集めかねない役柄だから。でも、かえってそれが良かったのかも。あいまいな役で人びとの記憶から消えていくより憎まれた方がよいし、役の性格が悪いのと演じる俳優の性格は関係ないですもんね。
老夫婦と中年夫婦のご近所トラブル、老夫婦の息子の浮気問題とDV一歩手前の行動、ペットを失うつらさや子どもを失うつらさ、不妊治療のつらさ等が幾重にも重なった結果の悲劇を丁寧に描いていてとても面白かったです。きっかけは「ただの木の影」で、きちんと間に第三者を入れて話し合っていれば済んだかもしれない問題だったのに、マイナスの出来事が積もり積もって最終的には死人が出るという有り様です。そして死人が出るほうがまだましという出来事が(さきに書いた、老婦人の行動)あり、強烈に印象に残る映画でした。感じの悪い映画が好きな方にはおすすめです。


