ナースコール
HELDIN/Late Shift/監督:ペトラ・フォルペ/2025年/スイス・ドイツ
マスコミ試写で鑑賞。2026年3月6日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開。
あらすじ:看護師フロリアの日常。
※ネタバレはありません。
とある州立病院。看護師のフロリア(レオニー・ベネシュ)はこの日、同僚が病欠しており、2人で満床の病棟を任されることに。看護学生の教育もしなければならず、いつも以上に忙しい日になります。
てきぱきと仕事を片付けるフロリアが、あまりにも忙しくてだんだん切羽詰まっていくお話です。とはいえプロ意識の高い看護師であるフロリアは、取り乱したりはしないんですね。あくまでも冷静に仕事をしている、でも、ほんの少しの手の震えや、眉間にできるシワなどから、限界が近づいていることがわかる。また、彼女の態度は「献身的」というよりは、状況をよく理解して自分のやるべきことを瞬時に判断できるといったようすです。
カメラはフロリアから離れることはありません。それゆえ、フロリアが見逃してしまった、あるいは後回しにした患者について、観客が状況を把握しているということはありません。ナースコールの電子音が鳴り、フロリアが部屋に入ってようやく、患者の状況がわかるんです。1回の判断ミスが重大な事故を引き起こしてしまう医療の現場で、今日もきっとフロリアのような看護師が働いている。
いやなことを言ってくる患者もいます。感謝の気持ちを表してくれる患者もいます。患者たちはみんな、好きで入院しているわけではない。痛くて、つらくて、どうしても看護師にあたってしまう人もいるでしょう。愛する人を亡くして、感情の行き場がなくて、看護師の責任にしたい人もいるでしょう。
原題の『HELDIN』はドイツ語で「ヒロイン」という意味ですが、フロリアのことを過剰にヒーローとして持ち上げてもいないところが、この映画の良いところだと思います。大仰な音楽で感情を煽ることもありません。現実味のない出来事も起こりません。かといって、「看護師あるある」といったようすでもなさそうです。
なんとも言いようのない、胸を締め付けられるような感情に見舞われました。おすすめです。

