オールド・オーク
The Old Oak/監督:ケン・ローチ/2023年/イギリス・フランス・ベルギー合作
マスコミ試写で鑑賞。公開は2026年4月24日です。
あらすじ:難民を受け入れられるか。
※ネタバレはありません。
2016年、北イングランド。かつて炭鉱で栄えたその村は、すっかり寂れていました。最後に残ったパブとして住民に親しまれてきた「オールド・オーク」を、シリア人難民ヤラが訪れます。
イギリス政府は2015年に「シリア人難民再定住プログラム(Syrian Resettlement Programme)」と呼ばれる施策によって2020年までの5年間に2万人のシリア人難民を受け入れることを発表しています。地方自治体は、シリア人難民の受け入れを義務づけられているわけではなく、自発的に参加する形です。
「オールド・オーク」の常連たちは差別主義者が多く、とてもわかりやすく口汚く罵ったりします。「私はレイシストじゃないけど学校によそ者がいるのはイヤ」というような、レイシストあるある発言もところどころでみられました。これ本当にどうにかならないんですかね、ほんとに言うよね。これと、“I have Black friends” 論法と、「差別と区別は違う」とか。特に「差別と区別は違う」と言うの、差別が悪いとはわかってるけど自分は悪くないって言いたいんですよね。よくないです。
TJとヤラが中心になって「オールド・オーク」の奥にある部屋を修理し、村人も難民もみんな無料で食事ができる場所を作ろうとします。常連たちは店が他人に乗っ取られていくように感じたのでしょう、ビールを飲みながらブーブー言っています。自分たちがいるからこの店はやっていけているんだ、という態度で、観ているとけっこうこちらもイライラしてきてしまうほど、自分勝手です。ただ、彼らもおそらくは、「古い友人らと好きなことを言って過ごせる快適な場所がなくなってしまう」という危機感から出てきてしまった発言と態度なのかなあとも思うのですが、あまりに幼稚で、かばう気になりません。
シリア人の少年が村の少年たちに暴力をふるわれ、SNSで拡散されるのは、2018年に実際に起きた以下のできごとを元にしているのかなと思いました。
英イングランド北部ハダースフィールドの学校でシリア難民の15歳少年が同じ学校の16歳少年に羽交い絞めにされ、地面に押し倒される動画が11月末からソーシャルメディアで広く拡散され、加害少年が暴行容疑で訴追される見通しとなった。さらに、被害を受けた少年の妹も、同じ学校の他の生徒たちに突き飛ばされ地面に倒される映像が明らかになった。
現実で起きていることを取り上げた映画の場合、その出来事が今もまだ解決していないのに劇中で解決したかのように描くことはできないと思います。誰にとっても気持ちの良いラストにすることもできないな、とも。それでも、人びとがこうして集まったことが無意味なわけではないと思わせるラストでした。おすすめです。


