隣人たち
Mothers’ Instinct/監督:ブノワ・ドゥローム/2024年/アメリカ・ベルギー・フランス・イギリス合作
マスコミ試写で鑑賞。2026年7月24日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。2018年のベルギー映画『母親たち』のリメイクです。オリジナル未見。さきに書いておきますが面白かったです。
あらすじ:隣の親友。
※ネタバレはありません。
同い年の息子をもつアリス(ジェシカ・チャステイン)とセリーヌ(アン・ハサウェイ)は、隣同士に住んでおり家族ぐるみの付き合いをしていました。ある日、セリーヌの息子が事故に遭ったことで、彼らの関係が壊れていきます。
観終わったあとで予告を観て、映画情報サイトに載っているあらすじを読んで、これは「セリーヌの息子の事故」以降に起きることがすべてネタバレ判定される映画なのだと思いました。なのでごく簡単に書きますが、とても面白いです。ジェシカ・チャステインとアン・ハサウェイの抜群の演技力はすべての場を制しているように思います。
1960年代、アメリカの郊外。主婦たちがカラフルな洋服を身にまとい、金銭的に余裕があり退屈ながらも幸せな生活を送っているという外側と、事故によって崩壊していく精神という内側の物語です。60年代アメリカを舞台にしたのはアルフレッド・ヒッチコックを意識しているからだそうですが、私には他の理由もあるのかなと思いました。この時代の結婚している女性は、経済的に夫に依存しないと生きていくことが難しく、自由もなく、子供を生み育て、家のことのみを行うという役割を担わされていたと思うのです。そういう背景をフェミニズム的な文脈から読み解くことはおそらく可能なんじゃないかなと思います。ただ、私はもっと簡単で目につきやすいことが気になりました。
物語の中に出てくる薬物の名前を書いたからといってネタバレにつながり、どのような展開になるかが全部わかってしまう、とは思わないので書きますが、クロロホルムが出てくることに引っかかりを感じたのです。クロロホルムって、昔はフィクションの中で「ハンカチ一枚で相手が気を失い、目を覚ませばすぐに動ける安全な誘拐用の薬」という扱いをされていたように思います。でも、いつ頃からか、あまり見られなくなりましたよね。調べてみると、今もまだクロロホルムを手軽な誘拐薬として扱う作品はあるそうですが、クロロホルムの代替としてスタンガンだったり、あるいは単に後ろから殴るだったりという手法が使われるほうが増えたようです。
私がフィクションの中でクロロホルムを見たのは、映画ではなく叔母が持っていた1970年代の怪奇少女漫画だったように思います。現実の医療現場からは副作用が危険視され、1950年代〜1970年代あたりには別の麻酔薬が使われるようになったそうで、フィクションの世界ではそこから十数年遅れて2000年代初頭あたりに減った、というような記述を見ました。
というわけで、クロロホルムがまだフィクションの世界では手軽に使われていたであろう60年代を舞台にし、クロロホルムを登場させるというのは自然なのではないか、と思ったわけです。まあクロロホルムのことはどうでも良いですが、本当に面白い映画なのでぜひ。おすすめです。


