the moment/ザ・モーメント
The Moment/監督:エイダン・ザミリ/2026年/アメリカ
マスコミ試写で鑑賞。公開は2026年6月5日です。
あらすじ:スターの裏側を密着取材します。
※ネタバレはありません。
人気シンガー、チャーリーXCXは、2024年に出したアルバム「brat(ブラット)」でヒットを飛ばし、「ブラット・サマー」と呼ばれる社会現象を引き起こしました。
私は音楽というとほとんどヒプノシスマイクしか聴かないため音楽方面の知識がまったくなく、チャーリーXCXのことも知りませんでした。この映画はモキュメンタリーなので主人公は俳優が演じているのだろうと思っていたのですが、チャーリーXCXの発案で彼女自身が主演していると知って驚きました。自分自身を少し批判的に見せる立場で映画にしてしまうのはかなり策略的でもあるし、単純にうまいなとも思います。
前半では彼女がいかに普段忙しくしているかを流れるように撮っています。常に誰かがそばにいて常に誰かが自分に話しかけ、騒がしくて汗ばんでいて暗くてチカチカし、みんなずっと混乱している感じ。ちょっとギャスパー・ノエっぽさがあります。睡眠もまともにとれず、誰が誰なのかもよくわからないままで一日が終わっていきます。実際に毎日このような生活を送っているとしたら、プライベートなんてありはしないし、人間らしい生活もままならないでしょう。若ければ体力もあって乗り越えられそうですが、こんな日々は3日ともたない気もします。
チャーリーXCXはそれらに巻き込まれながらも、なんとかすべてをうまく進めようと努力しているように見えます。しかしその努力も虚しく、音楽レーベル、映像担当の演出家、マネージャー、ライブ演出を任せている親友、それぞれの事情や誤解、金銭的な問題が重なっていき、結果として彼女の努力はすべて水泡に帰してしまうようでした。彼女も一生懸命やっているのにねえ、と思ったのですが、「一生懸命やった」というのは気持ちの問題でしかなく、結果がついてこなければビジネスとしては何の意味もないわけです。
この映画はそういったシビアなエンタメ業界の裏側を誇張して描いていると同時に、非常に滑稽な面も見せます。中盤以降、特に私の心を掴んだのは、胡散臭くてセンスのない映像演出家ヨハネス(アレキサンダー・スカルスガルド)でした。あいさつひとつしない、誰なのかわからない若い女性を従えて、周囲が「なんだこの人」と思っているふうなのに、どんどん口を出してくるんですよね。そんな彼も最後の最後にゾッとするようなことを言うので目が離せませんでした。おもしろかったです。


