スワロウテイル/円都から、30年前の日本を見る

クライム
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スワロウテイル

Swallowtail/監督:岩井俊二/1996年/日本/※この記事には広告リンクが含まれます。

U-NEXTで鑑賞。観るのはたぶん4回目です。この映画は年齢制限がありますが、それは子供が偽札を作るからだそうです。

スワロウテイル』を見返したい方はこちらから。

あらすじ:「円」が世界で一番強かった頃。

ネタバレしています。

日本にやってきた移民たちは、自分たちが住む街を「円都(イェンタウン)」と呼んでいました。一方で日本人らはそれを好まず、移民たちを「円盗(イェンタウン)」と呼んでいるのでした。

登場人物たちが日本語と中国語と英語が混じったような言葉を話していて、そこがとても好きです。最初に観たときから好きだったな、と思います。この映画、もう30年前の作品なんですよね。30年前の日本の経済状況はどんなものだったのだろうと思い、少し調べてみました。

わが国の景気が93年末に一応底を打った後も、回復テンポが現在に至るまで比較的緩やかなものにとどまった背景には、様々な構造調整圧力、すなわちアジア諸国の供給力拡大や95年央までの累積的な円高等がもたらしたグローバルな競争に基づく産業構造の転換圧力や、いわゆるバブル崩壊後の長期かつ大幅な資産価格下落がもたらしたバランス・シートの調整圧力がある。

1996年度の金融および経済の動向(要旨) : 日本銀行 Bank of Japan

要するに、景気は回復方向に向かってはいたけれど、バブル崩壊のダメージは少なくなかった、ということでしょうか。

もうひとつ、外国人労働者についての資料も読みました。

1990年代以降、外国人の在留者数は大幅に増加し、現在、約200万人に達し、今後も着実に増加していくと予測される。特に、1990年の入管法の改正以降、日系ブラジル人を中心とした定住者受入れに伴って、社会保険への未加入、本人及び家族の日本語教育、青少年犯罪の増加、地域社会との摩擦等の問題が顕在化し、集住都市の負担が増大している。このような状況を受けて、政府も様々な対策をとってきているが、これらの問題は政府内部の様々な省庁にまたがるため、省庁横断的な対応をとる必要がある。

第4章 国際社会で活躍する日本人と外交の役割 – 外務省

そもそもこの映画は架空の街を舞台にした映画であり、当時の日本の状況をそのまま写し取った作品ではありません。それでも、90年代の日本で起きていたさまざまな出来事が、かなり濃く反映されているように思います。

景気は回復に向かっていたけれど、バブル崩壊後の傷跡は残っていました。日本はまだ「豊かな国」だと見られていたけれど、その内側には、景気回復だけでは覆いきれない傷跡が残っていました。そして、1990年代以降、日本で暮らす外国人労働者や移民的な立場に置かれた人びとの存在も、以前よりはっきり見えるようになっていきます。

スワロウテイル』は、そうした時代の空気を、差別や搾取、欲望の寓話として描いているのだと思います。円を求めて人びとが集まり、言葉が混ざり、国籍や名前や居場所が曖昧になっていく。日本は豊かな場所として描かれているけれど、その豊かさは決して明るいものだけではなかったのです。この映画の「円都」という場所には、90年代の日本に残っていた経済的な不安と、外国から来た人びとを見る社会の目が反映されているように思います。

2026年の日本からこの映画を見返すと、30年前とは少し違うものが見えてきます。先に書いたように、この映画では、強い「円」を求めて人びとが集まってきます。しかし現在の日本では、外国から来た人びとを引き寄せているのは、強い円というより、人手不足の社会そのものではないでしょうか。そして、30年前にこの映画が描いていたものは、現在のほうがより具体的な問題として見えるようになったのではないかと思います。

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