愚か者の身分/暗い目をした男たち

サスペンス
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愚か者の身分

監督:永田琴/2025年/日本/※この記事には広告リンクが含まれます。

U-NEXTで鑑賞。Amazonプライムビデオでも見られます。

あらすじ:金を稼ぎたい。

ネタバレしています。

それぞれに事情を抱えた男たちが、一発逆転を狙って悪事に手を染めるお話です。

もともと気になっていたところへ、「目玉をくり抜くシーンがある」と聞いて俄然観たくなっていました。

冒頭で行われている犯罪のことを、最初は美人局かと思いました。ところが、SNSで女性を装って身寄りのない男性へ近づき、個人情報を引き出して戸籍を売るというもので、これはなかなかハードコアだぞと襟を正しましたね。

新宿を舞台に犯罪を描いた『炎上』『東京逃避行』『愚か者の身分』の3作品では、本作の脚本が最も地に足のついたものだと思いました。若者たちが犯罪の世界に身を置いていることを、刺激的な遊びとしては扱っていません。そのうえで、タクヤとマモルが馬鹿騒ぎもする普通の若者であることも描かれています。

物語は、同じ出来事をマモル、タクヤ、梶谷剣士の順に見せていきます。最初の章だけではわからなかった行動の理由や、出番の少なかった人物が裏で何をしていたのかが、視点が変わるたびに明らかになる羅生門形式です。

北村匠海が演じるタクヤには華と色気がありました。手際よく魚をさばける、暗い目をした顔立ちのよい男。これは強すぎます。着ていたエッシャーのTシャツも気になって調べたところ、ヴィンテージで2万から3万円を超えるものでした。北村匠海の、呼吸だけで見せる演技がすごい。声を上げたり大きく身体を動かしたりしなくても、息の仕方からタクヤの状態が伝わってきます。胸に迫るものがありました。

マモルを演じる林裕太もよかったです。食事の場面で、説明的な回想を入れずに家庭環境の悪さを匂わせる。タクヤとマモルが犯罪へ入った経緯について、本人たちの責任だけでは片づけられないものが見えてきます。

楽しみにしていた目玉をくり抜くシーンそのものは、結局ありませんでした。映るのはくり抜かれたあとです。ゴア映画ではないので、それでよいのでしょう。観客をひやっとさせるには十分でした。

最後の視点を担うのは、綾野剛演じる梶谷です。タクヤの身体の様子を見たときの反応からすると、それほどシビアな場数を踏んでいないのか、まだ「情」を持った人間であるように思います。親しい女性とのやりとりにも、それが表れていました。なんというか、この人は話が通じそうだな、という感じがあり、根っからの悪人ではないように見えます。ただし、もちろん、善人でもありません。綾野剛は、煙草の吸い方でも人物を見せます。うまいなあと思いました。

犯罪の世界から抜け出そうとする人間を描きながら、簡単に更生や救済の話にしない。3人にまだ残っている情が、助けになるのか、かえって逃げることを難しくするのか。おもしろかったです。

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