ぼくらの居場所
Scarborough/監督:シャシャ・ナカイ、リッチ・ウィリアムソン/2021年/カナダ
マスコミ試写で鑑賞。公開は2025年11月7日です。
あらすじ:3人の子どもがいました。。
※ネタバレはありません。
カナダ・トロント東部の街スカボロー。つらい環境にある3人の子どもたちと、彼ら/彼女らを支える教育センターを通じて、日々を描き出す物語です。
この物語に出てくる3人の子どもたちは、差別され経済的な困難をかかえています。両親からネグレクトされているローラ。父親の暴力から逃げ、この街にやってきたフィリピン人のビン。家族4人でシェルターに暮らす、先住民の血をひいているシルヴィー。そんな3人を温かく迎えてくれたのは、ソーシャルワーカーのヒナが責任者を務める教育センターでした。
子どもたちは全員、演技未経験者で今作が映画初出演です。このような内容だからこそ、きちんと子どもたちの心のケアが行われていると信じたいですが、大人でも精神的に参ってしまいそうなシーンがけっこうあります。3人の境遇を比べて誰が一番つらいと言うわけではありませんが、とりわけローラはかなりハードなシーンがあり、映画を観ているということを忘れて心配になってしまいました。それくらい子どもたちの演技は自然だったし、対象に近いカメラの存在が観客をこの映画に強く引きずり込んでいるようにも思います。
この映画は、複雑な人間模様の中心に教育センターがあり、そこでのふれあいを通して子どもたちの絆が深まっていくようすが描かれています。教育センターの責任者を務めるヒナが、ひとりの子どもにアルファベットの形のおもちゃを渡して言葉を覚えさせる一連の流れの美しさに思わず涙がこぼれました。ヒナはヒジャブを着用しており、この子どもから以前「赤ちゃんを食べるの?」と聞かれるシーンがありました。おそらくこの質問は、子どもの親が吹き込んだ、イスラム教徒への差別が根本にあったのではないかと思います(推測でしかないです)。子どもとはいえ言っていいことと悪いことはあるし、もし子どもだから善悪の区別がついていないんだ、仕方ないんだということだったら、その子が置かれている環境が悪いようにも思います。
私は、主に東南アジアに住む子どもたちのための日本語教育に関わる活動をおこなう団体で働いていました。私の業務自体は直接子どもたちと関わるわけではなかったし、現地に行ったこともありませんでしたが、この経験は私の価値観を大きく変えるものだったと思います。私には子どもがいないし、そのせいかはわかりませんが子どもがあまり好きではありません。でも、今までまったく興味がなかった、子どもへの教育について考えることによって、自分の人生が少し豊かなものになったような気さえします。子どもには教育がぜったいに必要だし、他の文化とふれあうことによって多様性を受け入れることは人生の学びとして子どもたちの心に残り、今はまだどうなるかわからない未来への前向きな一歩となるのではと思います。


