オールド・フォックス 11歳の選択
老狐狸/Old Fox/監督:シャオ・ヤーチュアン/2023年/台湾・日本合作
マスコミ試写で鑑賞。2024年6月14日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。
あらすじ:バブルに翻弄される父と子。
※ネタバレはありません。
1989年、台湾。レストランで働く父タイライ(リウ・グァンティン)と、11歳のリャオジエ(バイ・ルンイン)は、亡き母の夢だった理髪店を開くため、慎ましやかに生活していました。
トースターや花柄のコップ、ブラウン管テレビやガス給湯器、足踏み式ミシンなど、レトロなインテリアや小物がかわいらしくてどこか懐かしいです。かつての日本のようすに似ていますね。画面が全体的にポスターのような青緑色でまとまっているところも好きです。
急激な不動産価格の高騰により、父子は夢を諦めざるを得なくなってしまいます。そんな折、リャオジエは「腹黒いキツネ」というあだ名の地主、シャ(アキオ・チェン)と出会います。シャは、リャオジェに対し、世間は不公平であること、ときには他人を拒否しなければならないことなどを教えるのでした。
時代の荒波に揉まれながらも誠実に一歩ずつ進む道を選ぶか、強い者におもねって分け前にありつくか。子供であるリャオジエがそこまで計算ずくで動いているとは思わないです。ですが、水道代節約のために水を一滴ずつ使うような生活と、高い車に乗って周囲に圧を与え優越感にひたるような生活とを、リャオジエが心の中で比較しているようには見えるんですよね。そしてまだまだ子供である彼にとっては、こまめに蛇口をひねることよりも、乗っている車を見せびらかす方が楽しいのでしょう。
中盤、ニュースが騒がしくなりますが、具体的に何が起きているのかわからなかったため、ちょっと台湾について調べました。一切情報を入れたくない方は、ここから下を読まないほうがいいかなと思います(財務省のサイトにあった論文の一部で、歴史の話なので、読んでも即ネタバレというわけではないです)。
②矛盾の爆発と政府の対応
(a)経済的な矛盾と政府の取り組み
上に述べたような矛盾は、1985年プラザ合意を機とする円高によって、輸出がさらに急激に拡大し、大量の直接投資が行われたことで一気に爆発した。矛盾は第1に貿易収支や国際収支の大幅な黒字となって現れ、外貨準備高は激増した。その結果、日本円を追うようにして台湾元の対米ドルレートも1986年から急速に上昇を始めた。1985年には1米ドル約40元だったが、1987年には年平均で30台湾元を下回った。また、貿易黒字のかなりの部分はアメリカに対して生じていたため、アメリカから市場開放の圧力を強く受けることになった。
第2に、矛盾は過剰流動性となって現れた。しかし、それは一般的なインフレーションとはならず、主に資産市場に流れ込み、バブルを発生させた。1986年には1000ポイント前後だった株価指数はその後、急上昇し、1990年2月には12000を超えた。そこでバブルが破裂し、同年10月には2500ポイントを割り込むところまで急降下した。不動産市場もこれと並行した動きをしていたと考えられる。
このように急激な経済変動は、経済だけの問題ではなく、社会的に有害だった。株式市場のバブルによって、人々は眼を株価の動きに貼り付け、目の前の仕事を忘れた。また、高い利回りを謳って投資を募り、投機で運用していた「地価投資公司」が現れたが、結局、その多くは破綻し、大きな社会問題となった。一方、不動産価格の高騰によって、多くの人が持ち家を持つことを諦めなければならなくなった。
映画で描かれているのはまさにこのことでした。調べるって大事ですね……。なんでもそうだけれど、わかると楽しいし、以前よりももっと興味を持ちますね。
リャオジエはシャから強い影響を受け、シャの真似をするようになります。この映画、おじいちゃんと子供のふれあい映画なんですよ。ほのぼのとはしていないけれど。心温まるようなふれあいではないけれど。不平等な世界を生き延びるためには、他人を信じないことも大切であって、タイライのような優しい人が割を食うこともあるんですよね。シャの描き方は秀逸だと思います。この人を悪く描こうとすればいくらでもできるし、逆に、こんなふるまいをするけれども実はいい人でした、もできるわけです。でも、世の中が常に善と悪で成り立っているわけではないし、その境い目を縫うように生きる人もいると思うんですよ。ラストのリャオジエの様子がとても良かったです。おすすめです。


