ブラックホールに願いを!/伝えたいことはいつだって、喉に詰まって出てこなかった

SF
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ブラックホールに願いを!

When you wish upon a black hole/監督:渡邉聡/2023年/日本

マスコミ試写で鑑賞。2025年12月6日(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開。

あらすじ:時間が遅延する特殊な空間を作りました。

ネタバレはありません。

西暦2036年。人工ブラックホールの研究を行う施設がありました。


赤城教授(鳥居みゆき)は、時間遅延を引き起こす空間を使って、全人類に復讐を試みます。

「空想特撮映画」と銘打たれているわけですが、私は特撮に対する知識があまりないです。でも実相寺アングルくらいはどうにかわかります。テロップの出方なども、何とは言いませんが影響を感じますね。なお、フォントはゴシック体でした。

主人公の伊勢田みゆき(米澤成美)は、場面緘黙を患っています。場面緘黙とは、特定の社会的状況下で話すことができなくなる症状のことです。

「緘黙」とは「口を閉じて何も言わないこと、押し黙ること」を意味し、「場面緘黙」とは「他の状況で話しているにもかかわらず、特定の社会的状況では話すことが一貫してできない」と医学的に定義されています。
場面ごとに「しゃべれる/しゃべれない」がはっきりしているのが特徴で、事例として多いのは、家庭内ではほぼ問題なくしゃべれているのに、学校に行くと全くしゃべれなくなるパターンです。

引用元:家では話せても学校ではだんまり…… しゃべりたくてもしゃべれない「場面緘黙」 | 済生会

ざっくり説明すると、赤城教授による時間犯罪を止めようとする研究員たちと、世界はどうでもいいので憧れの人物である吉住あおい(吉見茉莉奈)とお近づきになりたい伊勢田の奮闘を描いた物語です。

映像がかなりリッチなところがとても良いなと思いましたね。インディーズでここまで出来るんだという感動があります。これは相当時間がかかっただろうなと思っていたら8年越しだそうで、監督をはじめ製作に関わったすべての俳優やスタッフが、ある意味での執着を持って取り組んでいたのだなと思うと、現状で劇場公開が決まっていないことがとてももったいないです。人の心を揺さぶるだけの熱量があるし、細かいところまでこだわりがあるのもとても良くわかるんです。

赤城教授が作り出した空間によって、時間が止まった(遅くなった)場所と、そうでない場所があり、その仕組みの説明もされます。が、おそらく仕組みがどういう現象によって引き起こされているのか、というのはどうでもよいというか、映画としての「装置」の一部であるので、正直に言いますと理解できていなくても問題ないです。少なくとも私には問題なかったです。わかります。大丈夫です。説明したあとで、あっさりとわかりやすく言い換えてくれますし。むしろ、説明や事象に対していちいち疑問を持ってしまうと集中力が削がれる可能性があるので、受け入れていくのが良いです。もちろん、SF感をたっぷり楽しみたい人を満足させるだけの説得力もあると思いますね。そのあたりはとても手堅く作られているなと感じました。設定の基盤がしっかりしているというか。

また、カメラワークやカット割りなども凝っていて、やりたいことが明確に伝わってくるところも大変良かったです。テンポが良くて展開も早いためダレないし、爽快感があるんですよね。場面は施設の中からほとんど外へ出ませんが、施設自体がおもしろい作り(のように見える)で広い(ように見える)ため、窮屈に感じる部分は一切ありませんでした。「そのように見える」って、すごく大事です。観客には、見えているものがすべてですから。

子供の頃から孤独感を抱えていた伊勢田は、場面緘黙を克服して生まれ変わりたいと思っています。そこへ登場した吉住先生は、伊勢田にとても優しく接するわけです。しかもかっこいい。そんなこと言われたら好きになっちゃうに決まってるでしょうが!! もう! 好き! 伊勢田は彼女に対して一目惚れしてしまっていると私は思いました、だって……あんな……好きに……なっちゃうでしょう!

多くの人びとと違う特性を持った人を排除することについての物語であるなと私は受け取りました。現代の社会が抱えている問題と近いというか、テーマとしては「反差別と他人への理解」なのかなとも。周囲に合わせることが難しい人、周囲に嘲笑されてしまう人、円滑な人間関係を築くのが難しい人たちに手を差し伸べる作品になっていると思います。

それでね、そろそろ大団円で終わるのかな、この映画は体感時間が短いなあと思っていたところ、まだ中盤だったんですよ。で、中盤からの展開が本番でした。これについてはネタバレになると思うので伏せますが、それまでとガラッと雰囲気が変わるんです。明るかった前半に対し、後半は暗くなります。そしてこれは大切なことだと思うんですが、話がとてもわかりやすくなるんですよね。別に前半が悪かったというわけではないです、でも後半のほうが圧倒的に面白い。私の好みというのもありますね。この、前半と後半のギャップに引き込まれました。やられたなあ……。この映画、すごいですよ。

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