RHEINGOLD ラインゴールド
Rheingold/監督:ファティ・アキン/2022年/ドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ合作
U-NEXTで鑑賞、11月12日04:23まで視聴可。信頼している人が勧めてくれたので観ました。映画も信頼感はたいせつです。
あらすじ:クルド系のラッパーXatarの誕生秘話。
※ネタバレしています。注意書きはありません。
クルド系の音楽家のもとに生まれたジワ・ハジャビ(エミリオ・サクラヤ)は、パリへ亡命したあとドイツに移住します。
ドイツ系で両親が音楽家でラップをやる木村昴がナレーションしている予告↑、広報部いい仕事してますね。
不良たちに袋叩きにされた復讐のためにボクシングを習い、ところ構わず暴行事件を起こすジワは「カター(危険なヤツ)」と言われるように。彼は麻薬の売人になり、警察から逃げてオランダへ移り住みます。麻薬を売って得た金でアムステルダム音楽院へ入学したジワは、「合法的な仕事」としてクラブの用心棒を務めるようになります。
とにかくジワはやり方が荒っぽく、計画性があるようでないような人物です。音楽の授業だけは受けているようすで、「やりたいことがはっきりしているのは良いですね(それ以外はともかくとして)」と言うよりほかありません。暴力で物事を解決し、銃で脅されてもひるむことなく相手の目を見据えるあたりに、只者ではない空気を出しているなと思うわけです。
そんなジワでさえも真顔になってドン引きしてしまう事件が中盤にあります。ジワが世話になっている裏社会のボス的なおじさんが、ちょっと自分にたてついたチンピラを迷いなく射殺するシーンです。『ロード・オブ・ウォー』(2005年)で、売り物の銃を使って試しに手下を撃ち殺したどこかの国の大統領に対してニコラス・ケイジが「撃ったら中古になるだろうが!」とブチ切れて怒鳴る恐ろしいシーンを思い出してしまいました。実際の出来事から着想を得ている映画で人命が軽く扱われるのは、やっぱり怖いです。
ジワは別に、用心棒になりたいわけでも売人になりたいわけでもなく、ましてや強盗なんてやりたくはない、そんなもの望んでいないのですが、犯罪以外でお金を稼ぐ方法がわからないのと、一度に必要な額が大きすぎるので一発逆転を狙うしかないのでしょう。昨今、ニュースを騒がせている闇バイトに手を染めてしまう人たちも同じだと思っています。一発逆転って、そんなのないからね。
後半の畳み掛けるような展開がとても好きで、特に金塊強盗からの裁判シーンがすごくグッと来ました。前半がけっこう苦労の連続で(まあ後半も苦労はしていますが)起きた出来事をただ追って描いているだけにも見えなくはないので、前半より後半のほうが見応えがあるなと思います。
また、ジワはある方法で刑務所にいながらレコーディングをしデビューするわけですが、初めてのCDを手にしたときの彼のようすに落涙しそうになりました。ようやく彼は自分がやりたいことを形にできたんだ、と。いつ死んでもおかしくなかった人生の中で、刑務所にいる時間が一番平穏だったという事実も。
「自己責任」が好きな人、「正しさ」にすべてを委ねている人、いろんな人がいますから、ジワが犯罪に手を染めた過去があることを非難し、彼を受け入れられず排除しようとする動きがあるのは仕方ないとも思います。ジワは彼の娘にとって模範的な父親ではない、今も悪人であると受け取られてもしかたがないことを彼はやってしまったから。「どうしてそんなことをしたの?」と娘に聞かれたときのジワの答えに彼の経験のすべてが詰まっているなと思いました。おすすめです。


