ザ・ルーム・ネクスト・ドア
La habitacion de al lado/The Room Next Door/監督:ペドロ・アルモドバル/2024年/スペイン
U-NEXTで鑑賞。今まで観た安楽死を扱った映画で印象的だったのは、フランソワ・オゾンの『すべてうまくいきますように』(2021年)ですが、これは感想を書いていないので細部や自分がそのとき感じたことがもうわからないんですよね。比較しようと思いましたができませんでした。
あらすじ:死ぬとき隣にいてほしい。
※ネタバレしています。
癌を患ったマーサ(ティルダ・スウィントン)は、かつての親友であるイングリッド(ジュリアン・ムーア)と再会します。残された時間があまりないと知ったマーサは、自分の尊厳を守るために安楽死を計画。最期の時をイングリッドとともに過ごすため、森の中の家を借りるのでした。
ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアという組み合わせとペドロ・アルモドバル監督ということで劇場で観るつもりでいましたが逃したんですよね。アルモドバル作品はそんなにたくさんは観ておらずですが、私はジュリアン・ムーアが大好きなので。ティルダ・スウィントンもその佇まいから所作まで、どこか人間離れした美しさをもつ人でとても魅力的な俳優です。
マーサとイングリッドは親友ではあったものの、頻繁に会う仲ではないのです。マーサが、自分の死を近くで見守ってほしいと頼んだ人物は他にもおり、その人らがみんな怖がって断ったためにイングリッドに白羽の矢が立ちました。大親友ではないけれども犯罪の片棒を担いでくれと頼める相手で、秘密も守ってくれる人ってそう簡単には見つからないのではないでしょうか。2人の間に絶妙な距離感をもたせたことは、設定としてとても優れているのではないかと思いました。マーサとイングリッドがもっと親しかったらこの空気感は出なかったのではないかと思うんです。
イングリッドは、マーサの恋人だった男性と交際した過去があります。その男性を演じているのがジョン・タトゥーロで、私はこの映画に彼が出ていることを知らなかったので驚きました。メインの登場人物がティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロってもう演技力抜群じゃないですか。後半に差しかかるあたりでティルダ・スウィントンが亡くなったかもしれないと思ったジュリアン・ムーアが裏庭に出ていくときの表情がすばらしくて、この人は本当にリアルな演技をする俳優だなあと思いました。激しく慟哭するわけでもなく、取り乱すわけでもなく。表情管理が細やかなんですよね。
けっして明るいストーリーではないけれど、美術や衣装がカラフルで、ともすれば落ち込みかねない物語を鮮やかに彩っています。特にティルダ・スウィントンの衣装は素晴らしかったですね。ざっくりした編みの原色のセーターとか、死ぬ時に着ていたスーツとか。あんなにはっきりした黄色のスーツはなかなか着こなせるものでもないし、それを遺体に着せようという監督の判断も興味深いものがあります。おすすめです。


