うまれる/お前に何がわかるんだ

人間ドラマ
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うまれる

監督:田中聡/2021年/日本

U-NEXTで鑑賞。5月24日からAmazon Prime Videoでも配信されるようです。33分の短編です。

あらすじ:子供がいじめで死にました。

ネタバレはありません。

大切な人を亡くし、心に傷を負った人びとが集まるグループセラピー。安川良子は、「娘の裕美が殺された」と話し始めます。


裕美は天然パーマが理由で同級生からいじめられており、良子はいじめのことを知っていました。美容院を営む良子は、娘の髪を切ってあげれば良かったのに、と後悔しています。

この映画、90分くらいにも出来そうな内容だと私は思うんですが、33分でまとめているのが大変良いですね。欲を言えば、最後の3分はなくても良かったです。もちろん、良子が救われないままエンドロールだと後味がめちゃくちゃ悪いので、救いを入れているのは理解できます。私の好みの問題です。救いのない話が好きなので……。

グループセラピーで出しゃばってくる(多分主催者の)おばあさんもそうだし、いじめっ子たちに詰問するシーンもそうだし、いじめっ子たちの母親を集めたシーンもそうなんですが(ようするにほぼ全てのシーンです)、人の心を持っていないように思える登場人物ばかりが出てきます。良子に感情移入させる勢いが凄まじいため、余計にそう思いますね。それから、母親らが良子を「頭おかしい」「この人、精神の病院に通ってるみたいだから」とか言うんですよ。で、で、出た〜!! 精神的な不調に理解のない奴が言いがちなワード! あんたは「普通」で良かったですね!! その幸せを噛み締めながら死ね!!!

と、精神疾患が絡むとあまり冷静でなくなる私ですが、一歩引いた目で観ると、どの登場人物にも事情があるし人生があるんですよね……。私は「人の心を持っていないように思える登場人物ばかり」と書きましたが、それは良子の目から彼女らを見ているからです。立場が変われば見方も変わる、という当然といえば当然のことを実感として味わうことが出来ました。満足……!

子供を持ったことのない私でさえ、良子が裕美に対してどれほど愛情を注いできたかというのが見て取れるところが、とてもうまく出来ていると思います。溜まっていくフラストレーションが一気に解放され、いっそ清々しいほどのカタルシスを感じることができるし(起きている出来事は最悪だけど、見方を変えると最高になるという上手さ)、エンターテイメント性も(ある意味で)存在するという。おすすめです。

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