おんどりの鳴く前に
Oameni de treaba/監督:パウル・ネゴエスク/2022年/ルーマニア・ブルガリア合作
マスコミ試写で鑑賞。公開は2025年1月24日です。本当にどうでもいいことですが、この映画に出てくる鶏のほとんどは、おんどりではなくめんどりである気がします。とさかが小さいので……。
あらすじ:小さな村で殺人事件が起きます。
※ネタバレはありません。
ルーマニアにある小さな美しい村で働く警官イリエは、果樹園を持つことを夢見て、鬱屈とした生活を送っていました。新人警官ヴァリが村へやってきて間もなく、平和なはずのこの場所で惨殺死体が発見されます。
田舎の村が怖い映画はたくさんあり、私が観てきた中ではだいたい「都会から来た主人公が村に立ち入ることによって、その村の恐ろしさが浮かび上がる」という展開のものが多かったのですが、『おんどりの鳴く前に』は、今までにないタイプの映画だなと思いました。たしかにこの映画も、新人警官ヴァリがよそからやってくるところから物語が動き始めますが、彼の視点で描かれるわけではないんです。あくまでも主人公は10年ほどこの村で働いている警官イリエであって、彼は村のことを良くわかっており、村民ともうまくやっているわけです。ただ彼は、うまくやりすぎてしまっているきらいがあります。
この村では、土地の権力者である村長と司祭がすべての物事を束ねており、法律によって守られるべき秩序がありません。ゆえに、司法の番人であるはずのイリエはその力を失い、ただただ傍観するのみです。こうした村の悪習をわかっていないヴァリは、持ち前の正義感と熱心さで村人たちに事情聴取しますが、イリエから「とにかく何もすんな、帰って寝ろ」と叱責されてしまいます。人が死んでいるのに捜査を禁じられたヴァリは、義憤に堪えなかったことでしょう。
この記事のカテゴリーに「コメディ」が入っているのは選択ミスではなく、なんとも表現しがたい可笑しみがそこかしこにあるからです。「つい笑っちゃったけど、笑っても良いシーンだっただろうか?」と思うような可笑しみが物語の中でスパイスになり、重さを軽減しているように思えました。おすすめです。


