ハロルド・フライのまさかの旅立ち/信じる者は救われるんじゃなくて、救われるまで信じられるかどうかだ

ロードムービー
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ハロルド・フライのまさかの旅立ち

The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry/監督:ヘティ・マクドナルド/2022年/イギリス

U-NEXTで鑑賞。

あらすじ:遠くまで歩きます。

ネタバレしています。注意書きはありません。

妻とともに穏やかな暮らしをしていたハロルド(ジム・ブロードベント)のもとへ、1通の手紙が届きます。差出人は、以前ハロルドと同じビール工場で働いていたクイーニー(リンダ・バセット)で、ホスピスにいることが書かれていました。ハロルドは衝動的に、800キロ離れたクイーニーの元へ歩いていくことを決めました。


ジム・ブロードベントはお顔立ちや仕草などが可愛らしい感じで、くりっとした大きな目が印象的な俳優です。今作では、その眼差しに静かな情熱をたたえたような、意志の強さを感じます。おじいちゃんのロードムービーという点では『2度目のはなればなれ』(2023年)と若干似ていますね。というか単に公開年がかぶっただけで、おじいちゃん映画のロードムービーは多いです。

ハロルドがクイーニーに会うため旅をしていることがニュースになり、新聞やテレビで取り上げられます。家でイライラしながら待っているハロルドの妻モーリーン(ペネロープ・ウィルトン)には、たまったもんじゃありません。愛する夫がフラッと家を出てしまい、そのまま何週間も帰ってこないうえ、国中が彼の行いを認め、応援しているなんて。

途中、ハロルドと一緒に歩きたがる若者と出会います。だんだんハロルドの知名度が上がっていくと、ちいさなコミュニティができてしまうんですね。それは私はちょっと違うなあと思っていたら、ハロルドもそう思っていたっぽくって、コミュニティから逃げるように姿を消します。ファンみたいな人びととワイワイしながら歩くのは、ハロルドの信念と違うだろうし、過剰に持ち上げられたいわけではないだろうし。そもそも、取り巻き連中は、クイーニーのことを知りませんから。

ハロルドのことで意外だなと思ったのは(まあ、映画の作り上、そうなることは容易にわかるとはいえ)彼が歩いている間にクイーニーのことを一度も思い返さないところです。むしろ息子を思い出しているんですよね。そのようすから見るに、明らかに息子はもうこの世にはおらず、死因もだいたい想像がつくところで(オーバードーズかなとも思ったけど)、わかっているけれど胸が痛みます。ハロルドはなぜ息子のことを思い返すのか、なぜクイーニーに会わなければならないのか。

こういう物語って、特におじいちゃん映画では王道パターンかなとも思います。だいたい予告でコメディっぽくしてくるんですよ。わかってんの! もー、全部わかってんだから! って言いながら泣きました。それにしても、親より先に逝くのは本当に良くないなと、良くない! 病気とか事故なら仕方ないかもしれないけれど……。生きて、親を見送るまでが私の人生なんだろうな。私は子どもの居ない人生を選んだから、子どもに与えていたはずの愛情を親に向けないといけないな、と思いました。私はいくつになっても、「娘」だという意識が変わらなくて、いつまでも、親に守ってもらえるんだという気持ちが変わらなくて。良くないな、良くないです。私は本当に良くないけれど、この映画はおすすめです。

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