ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた/諦めたはずの夢

人間ドラマ
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ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた

Dreamin’ Wild/監督:ビル・ポーラッド/2022年/アメリカ
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マスコミ試写で鑑賞。2025年1月31日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開。

あらすじ:30年前に作ったアルバムが取り上げられます(実話)。

ネタバレはありません。

1970年代の田舎町。ドニー・エマーソン(ケイシー・アフレック)は、兄ジョー(ウォルトン・ゴギンズ)とともに、父親手作りのスタジオで音楽を作っていました。30年後、コレクターによって発見されたドニーらのアルバムが脚光を浴びることになります。

プロデューサーとの関係も良好で、30年前の夢をついに叶えたと喜ぶ両親に対し、ドニーはどこか物憂げな表情を浮かべるのでした。彼が今まで考えないようにしてきた過去や、自分の感情と向き合うことになってしまったからです。

30年前、ドニーに何が起きたのか。家族に対する後ろめたい気持ちをまざまざと思い出すことになってしまったドニーは、ある日ブチ切れて、場を台無しにしてしまいます。こうじゃなかった、こんなはずじゃなかった。自分への憤りと兄に対する後悔、そして彼にとって一番大きかったであろう、父親の存在。家族はいつだって自分の味方だったし、応援してくれていたのに、それに応えられなかった過去の自分に対する怒りも大きかったのでしょう。

ケイシー・アフレックに対する私の印象って、『キラー・インサイド・ミー』(2010年)での暴力的な役柄と、『ファーナス/訣別の朝』(2013年)での、国に裏切られ死んでいった不器用な役柄が大きくて(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年)は未見)、かすれた声や、いつキレてもおかしくない情緒不安定さが少し怖いんです。この映画でも、さきに書いた通りいきなりキレるシーンがあるので、やっぱりちょっとどこか怖いなと思ったのですが、ラストに向けての抑えたように見える演技がぐさっと刺さってしまいました。

私はミュージシャンの伝記映画は観ないことにしていて(『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)以降に乱発された、二匹目のドジョウ狙いの伝記映画をいくつか観た結果、これ以上は観ないと決めたんです。私に合わないので)、今作も「実話で音楽映画か……」と二の足を踏んでいたのですが、観てよかったです。たぶん、音楽で成功した! というストーリーではないことと、主人公の心情や過去、家族とのありようにフォーカスされていたからかなと思います。あともういっこ、実話系の映画ってエンドロール前に黒バックで「このあと彼らはこうなって、こうなりましたよ」っていうテロップが出るじゃないですか。あのテロップが効果的に作用することもありますが、蛇足であるときの方が多いと思っていて、私はあんまり好まないんです。それがね、この映画では違ったので、良かったです。

ラストは賛否あるかなとも思いますが、私は賛でした。あまりにも思いがけなく始まったラストシーンのようすと、ケイシー・アフレックはもちろんウォルトン・ゴギンズボー・ブリッジスらが作り上げてきたドラマが突然ぎゅっと濃縮されたように思えて涙が出ました。おすすめです。

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