トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン
Twinkle, Twinkle, “Killer” Kane/The Ninth Configuration/監督:ウィリアム・ピーター・ブラッティ/1980年/アメリカ
この記事は2010年に書いたトゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン | 映画感想 * FRAGILEを加筆修正し転載したものです。もとの記事とはほとんど違うものになっています。
U-NEXTで鑑賞。配信が今月末までだったので15年ぶりに観ました。
あらすじ:精神科医がやってきます。
※ネタバレしています。
ベトナム戦争によって多くの兵士がPTSDになりました。政府は彼らの異常性の真偽を確かめるべく、秘密調査施設と療養所を設けます。そのうちのひとつである第18号施設は、太平洋沿岸の古城にありました。ある日、その施設へ新しい精神科医、ハドソン・ケーン大佐(ステイシー・キーチ)が赴任してきます。
患者たちは、自分をスーパーマンと思い込んでいる(ので、電話ボックス内で着替えをする)者や、壁抜けができると思い込んでいる解離性同一性障害を患った者、元宇宙飛行士で妄想癖のある者(スコット・ウィルソン)、虚言癖があり犬で芝居をやろうとしている者などなどクセ者揃い。彼らが代わる代わるケーン大佐のところへやってきて、支離滅裂な話をします。そんな患者たちに手を焼いたケーン大佐は、どんどん自分も消耗していくのでした。
映画の半分くらいは、患者たちがケーン大佐にウザ絡みして、ケーン大佐がむすっとしながら何かを答えるというシーンで構成されています。これは好き嫌いが分かれそうだなと思いました。同じことの繰り返しなので……。
ところでケーン大佐は、兄が見る悪夢を自分も見るという経験をしていました。兄の名はキラー・ケーン、ゲリラ戦で活躍したことで有名です。中間をがっつり省いてネタバレすると、ケーン大佐は実はキラー・ケーンその人で、人違いで派遣命令が下ったのをいいことに戦線離脱し、第18号施設へ精神科医のふりをしてやってきた患者でした。
人の善と神の存在を信じるケーン大佐は、もとはおそらく人を傷つけることなどしたくなかっただろうと想像します。伝説になるほどたくさんの人を殺めた彼の中に残っていた善性は、元宇宙飛行士がバーで荒くれ者たちからリンチに遭っているのを見過ごせず、なんとかして彼を助けようとした姿に現れています。彼は荒くれ者たちからの屈辱的な要望を受け入れ、床を舐めてでもできうる限り穏便に済ませたかったのでしょう。しかし元宇宙飛行士が、床を舐めるよりもっと屈辱的なことをさせられているのを見たケーン大佐は、我慢できずに荒くれ者たちを皆殺しにしてしまうのでした。
この、バーでの一件はケーン大佐にとって不本意な出来事で、最終的にケーン大佐が自らの命を断つことは、罪を償う意味もあったのでしょう。ケーン大佐の遺書には「私の死が(第18号施設にいる患者たちに対する)ショック療法になることを願う」と書かれていました。そして、元宇宙飛行士への謝罪も。こんなに他人のことを思いやることができ自己犠牲的な人ですら、戦場では子供を殺すわけです。今、さまざまな土地で起きている紛争や虐殺のことを思うと、人の善性が適切な形で現れ、争いがなくなることを願ってやみません。


