ラブ・アゲイン
Crazy, Stupid, Love./監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア/2011年/アメリカ
この記事は2011年に書いたラブ・アゲイン/あの素晴らしい愛をもう一度 | 映画感想 * FRAGILEに加筆修正し転載したものです。原題がいいんだよね、『Crazy, Stupid, Love.』
あらすじ:奥さんに突然離婚を告げられて、ヤリチンからモテを学びます。
※ネタバレはありません。
このタイトルではぜったいに見に行かない種類の映画なんですが、Twitterでの評判がすこぶるよろしかったことと、『フィリップ、きみを愛してる!』のグレン・フィカーラとジョン・レクアが監督であること、また『塔の上のラプンツェル』のダン・フォーゲルマンが脚本ということで、わたし『塔の上のラプンツェル』は2011年ベストですので、これはもう見に行くしかない、と思いましてですね。
キャル(スティーヴ・カレル)はもっさりした冴えないお父さん。奥さんのエミリー(ジュリアン・ムーア)が、ある日突然「浮気した。離婚して」と言い出し、もう、しょんぼりです。毎晩バーで呑んだくれていたら、いつもナンパばっかしてるヤリチンマッチョのジェイコブ(ライアン・ゴズリング)から、「お前にモテの秘訣を教えてやるからちょっとがんばれよ!」と言われるのでした。
つまりライアン・ゴズリングがスティーブ・カレルに「May The Force Be With You」って言うみたいな、ライアン・ゴズリングはヨーダですから、って別に、劇中で言われていたように『ベスト・キッド』とかでもいいですし、なんでもいいです、師弟ならなんでもいい。スポ根もの的にモテ特訓が始まるわけで、マジックテープ式財布がダサいのはどこでもいっしょなんだなあとか、会話がうまいってどういうことなのかよく分かるよなあとか、自分の身の回りと比べて見て笑えるんですよね。特訓シーンっていいよね。
で、すごい特訓して自信つけたからってもろもろぜんぶうまくいくわけじゃないっていうところがこの映画のいいところでね、この夫婦は25年間連れ添ってきて、25年目でいきなりの離婚でさ、もう、付け焼刃でどうにかなるものでもないんですよ。最初、ジュリアン・ムーアは黙っていれば浮気したことわかんないんだから離婚することないじゃん…って思ったんですが、浮気したことそのものじゃないんだよね、もうね、いろいろつもりつもったすれ違いの結果の浮気なんだよね。離婚後すぐ浮気相手(ケビン・ベーコン)とくっついたというわけでもないですから。もういやだなあという気持ちがずっとあって、浮気して一線を超えてしまった。
このへん含めたジュリアン・ムーアの奥さん感がさ、なんだかすごくいいなーと思って。わたしジュリアン・ムーア好きなんでしょうね、たぶん。好きなんですね。だから、電話のところですごい泣いてしまってさ、なんで泣いたのかまったく意味わからなくて。元夫のことを、嫌いと思うところもあれども、もちろん好きなところもあると、その好きなところだけをちょっと欲しかったから電話したのかなと思うんです。そういうずるさみたいなものもわからんでもないし、離婚して傷つけてしまった罪悪感なんかもあるんだろうなあとかね。
そんなこんなで、なんで泣いてるのかわかんないよエーン、ってなっていたら、そのすぐあとには大笑いしてさ、よし、こんだけ笑ったらさっきまで泣いていたことがバレないで済む、とか思ったりしてさ、もう完全に製作者側の手の上で踊らされてるんだけれども、それがたいへん心地よいんですよね。
この映画は、人から見た自分についての物語でもあるなあと思うんです。モテ特訓で見た目から入ることもそうだし、電話のところもそう、スティーブ・カレルの息子(ジョナ・ボボ)はベビーシッター(アナリー・ティプトン)との歳の差を気にしている、エマ・ストーンにしたってそうなのね。相手が自分をどう見ているかを気にして空回りしたりする。
客観性というのは恋愛においてなかなか持てないものであるし(恋愛まっさかりのときに客観的になれたらどれだけ傷つかずに済むだろうか)、恋愛はひとりでするものではないから、自分だけ盛り上がっていても相手だけ盛り上がっていてもどうにもならないよね。自分がいかなる人間であるのかを知って、他人からどう見られるのかを考えて、相手のことを一歩引いたところから眺めてさ、それでちょっと大人になりましょうよ、大人になってまた前へ進みましょう、大人になるっていいことですよね。
その第一歩として、見た目とふるまいを「きちんと」「相応に」することって大切だと思うんですよ。おしゃれってガマンしなくちゃいけないこともあるけれど楽しいし、とくにわたしは女なので、化粧や服装ひとつで周囲の反応が変わることや、自分の気持ちも変わるのを現実的に知っているからさ、男の人も(もちろん女もだけど)、見た目がちょっと変わるだけでこんなに世界が違って見えるんだ、っていうの、楽しんでほしいなあ。ライアン・ゴズリングの場合は、見た目はもういいですから、内面への第一歩を踏み出したということなんだよね。なんだかんだ言って見た目も大切なのよ……。中身、素材だけで恋愛がうまくいくことなんて、ないんじゃないかなー。見た目が変われば中身もちょっとは変わるしね。


