帰ってきたヒトラー
ER IST WIEDER DA/LOOK WHO’S BACK/監督:ダーヴィト・ヴネント/2015年/ドイツ
この記事は2016年に書いた帰ってきたヒトラー/総統!この国はもうダメであります! | 映画感想 * FRAGILEを修正し転載したものです。
TOHOシネマズ新宿 スクリーン3 G-11で鑑賞。ドイツだけが撮れる、シャレにならない『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006年)。
あらすじ:ヒトラーが生きていたぞ。
※ネタバレはありません。
アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)はタイムスリップした。彼を芸人だと思ったテレビマンとともにドイツを旅したり、テレビに出たりするヒトラーだったが………。
オリヴァー・マスッチがちょいちょいかわいかったりして憎めないので、あ、ああ……となる。町の人の反応にはほんとうにびっくり。
政治的な要素の強い作品についてはあまりなにも言わないようにしていて、自分の考えを公にしたくないことと自分がいかに政治について知識がないかがバレてしまうのでそうしているのだけれど、『帰ってきたヒトラー』についてはちょっとだけ書いておこうと思う。これはすごかった。
「コメディとギャグは違う」と友人が言っていて、それはあるものを批判するときに出てきた言葉なので具体的には書かないが、ともかく、コメディとギャグは違う。『帰ってきたヒトラー』で、下着をクリーニングに出そうとするシーンなどは「ギャグ」だ。ほかは「コメディ」である。これがコメディとして成り立つかどうか、製作者はずいぶんとギリギリの賭けをしたなあとも思う。
ゲリラ撮影に見えるところは一体どこからどこまでがゲリラなのかと思って、公式サイトを読んだが、どうも、それらしいところは全部ガチっぽい。カメラがいるから、撮影なんだろうと思われていたにせよ、それがどんな撮影であろうと、ヒトラーの姿をした人が公の場に現れることに対し好意的な反応が多く見られるのは不思議だなと思う。好意的な人が多すぎて変だなあとも思ったが、こういう作り方をするのだから、好意的でない人がいたらそれももちろん入れるわけで、実際数人はそういう人が居たから、激しく偏った編集をしたとも思えない。ある程度はしているのかもしれないが、わからん。そこは。
ともかく。引き合いに出したので書くと『ボラット』は「なんだかわからない迷惑な人が大騒ぎして困ったゾ」だったのが、この作品の場合、誰もが知っている(それこそ世界レベルで誰もが知っている)「歴史上の人物が現れたゾ」しかもキャラ設定はばっちりで、ばか騒ぎするわけでもない。政治の話をする。思想的に偏ったキャラクターに対して言っているからというのもあるかもしれないが、人々が口にする本音は偏っている。ヒトラーの「魅力」に引きずられて、本音が出ていると思う。
それにしてもヒトラー役のオリヴァー・マスッチはほんとうによくやった。アドリブでヒトラーの真似というのはそうそう出来ることではない。言いよどんだら負けだからだ。すらすらとヒトラーっぽいことを言う。その迫力に押されて、ニヤニヤ笑いしていた者も真顔になっていく。「こいつは頭がおかしい」と思っていたのかもしれない相手に言い負かされ、「こいつは(違う意味で)頭がおかしい」と思ったのだろうか。「ヒトラーと接した人々」に、一体どう感じたのかを聞いてみたいところである。


