ピアニスト/愛なんて、母のお腹に置いてきた

ラブロマンス
この記事は約4分で読めます。

ピアニスト

La Pianiste/監督:ミヒャエル・ハネケ/2001年/フランス

U-NEXTで鑑賞。2024年9月30日で配信が終わると知ったので、慌てて観ました。

あらすじ:ピアノの教授は大変な変態でした。

ネタバレしています。注意書きはありません。

国立音楽院の厳格なピアノ教授であるエリカ(イザベル・ユペール)は、中年になっても母親(アニー・ジラルド)と同居しています。それだけでなく、夜は同じベッドに寝ているのです。エリカの年齢設定がちょっとわかりませんが、見た目は40を超えているようにも思います。とにかく、若くはないですね。


母親に支配されているようにみえるエリカは、それでも母親と離れることを望んではいないようです。あるきっかけでエリカと出会ったワルター(ブノワ・マジメル)は、彼女に惹かれ、授業を受けますが……。

音楽に対する厳しい意見や眼差し、音楽との向き合い方と、個室ビデオでポルノを観るようすやカミソリで自分の股間を傷つけるようすとの間が乖離しすぎて面食らいました。特にカミソリはいったい何をしているのかわかりません。あれは割礼ではない……ですよね。あと個室ビデオって日本特有のHENTAI文化じゃなかったんですね。働いているときは地味な洋服を着ていて、家にいるときは花柄の派手な部屋着を着ているところも彼女の二面性をあらわしているように思います。

なにをするときも無表情で居るのかと思いきや、他人のカーセックスを覗いて放尿するシーンでは涙を流します。でも、涙はただ流れているだけといったようすで、彼女の表情から何かを読み取ることは非常に困難でした。のちのシーンでエリカは「私には感情がない」と言います。

彼女の歪んだ性格はあきらかに母親からの影響でしょう。もしかしたら、エリカが本当に愛しているのは母親なのかな、と思っていたところ、私が思っていた以上に彼女は母親を愛していたので、さすがにびっくりしました。これが父親と娘ならまだギリギリ理解できるんですが(気持ち悪いけど)、エリカは母親に対して性欲を抱いているっぽいので、気持ち悪いを通り越してしまいましたね。いや、性欲というのはまた違うのかな。

ワルターはエリカの秘めた欲望についてを知ります。そしてエリカに「知的な顔でクソ同然の中身」「病気だから治療しろ」「心から愛していたのに、今は嫌悪感しかない」と言うんですね。マゾヒスティックな欲望はクソなのでしょうか、病気なのでしょうか。ワルターが望んでいたエリカとの関係は、お互いにとって心地の良い「普通の恋愛」だったんだろうと思います。ここで「では普通とは何か」と言い出すとまたちょっと話が混乱していくし映画から離れるので置いておきます。

エリカには破滅願望があるのだなと思います。あるいは破壊願望かもしれません。この感想を書くときに、破滅願望と破壊願望がごっちゃになったので調べました。

何もかもがどうでもよいと感じ、物事が破滅することを望むことを意味する語。特に、受動的に自分自身の破滅を望むことを指すことが多く、能動的なものは破壊願望などと呼ばれることもある。
「破滅願望(はめつがんぼう)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

自分を激しく拒んだワルターに会いに行き、そこでもまた嫌われる、気持ち悪がられるような行動を取るところをみるに、エリカは能動的ですよね。個室ビデオも、覗き行為も、生徒への嫌がらせも、ワルターに対して自分が望むことを打ち明けるところも。ワルターに「あなた次第」と言いつつ、実際は自分の言いなりにしたいし、自分勝手だなと思います。もしかしたら、エリカはワルターに出会うまで、他人とは性愛が絡む関係を持ったことがないのではないか、と思いました。ただ、それは映画の中で描かれていないので私の妄想でしかありません。母親がエリカにべったりで、ちょっと家に帰るのが遅くなった程度でキレたりするのをみるに、母親が原因でエリカは誰かと親密な関係を持つこともできなかったのかなと思うんです。だから、私の妄想は正解なのかなとも思います、わからん。

ラスト、エリカは死なない程度に自分を傷つけ、たくさん客が集まっている演奏会をほったらかしてどこかへ行ってしまいます。なにもかも台無しだし、たくさんの人が困る、あるいは怒ったり心配したりする、ともかく、よいことは絶対に起きないのがわかっているのに。それでも自分の欲望に忠実であるしかない生き方を選ぶのだなと思いました。苦労したね……。

タイトルとURLをコピーしました