2度目のはなればなれ
The Great Escaper/監督:オリヴァー・パーカー/2023年/イギリス
TOHOシネマズ新宿 スクリーン11 I-10で鑑賞。マイケル・ケイン引退作、グレンダ・ジャクソン遺作です。マイケル・ケイン、引退作ということは実質遺作なんだよね……。そして実話ベースです。
あらすじ:イギリスからノルマンディーへ向かいます。
※ネタバレしています。注意書きはありません。
イギリスの老人ホームで身を寄せ合って生きているバーニー(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)。バーニーはある日、フランスのノルマンディーで行われる式典へ独りで向かうことにします。
老人ホームでは、バーニーが行方不明になったことで警察を巻き込んでの大騒ぎになっていました。そんなことはまったく知らないバーニーは、フランスへ向かうフェリーでアーサー(ジョン・スタンディング)という元空軍の男性と知り合い、行動を共にするのでした。
ポスターから想像もできない(相変わらず、予告は観ないで行ったので)重い話で、強いメッセージ性も感じます。すごく簡単に言うと反戦映画です。個々の戦争の体験について描いたうえで、戦争が世界に何をもたらしてしまったのか、こんな経験をした人たちがいるのに、今も争いが起きていることについての批判をしているように思います。
バーニーは友人を、アーサーのは弟を戦争で亡くしていますが、ふたりとも、彼らが眠る墓地へは、それまで一度も行っていませんでした。バーニーが「無駄な死だ」と言った、約5,000人が眠る墓地へ。これは、バーニーとアーサーが自分の過去にけじめをつける物語であり、また、バーニーが突然遠くへ行ってしまっても、妻であるレネが彼を信じて待ち続けたことについての愛の物語です。
2023年製作の映画なので、この撮影の時、マイケル・ケインは90歳ですね。やはり彼はとても美しく、穏やかな光をたたえた眼差しに、この人の新しい演技はもう観ることが出来ないのだという事実が悲しみとともに襲ってきて涙が出ました。アーサーとバーニーがずっとそれぞれの心のうちに秘めてきた秘密を打ち明けるときの、秘密の重さにも涙が出ましたね。そんなつらいことある? そんな経験をしたら、死ぬまで自分を責め続けてしまうじゃないか、という。でも、バーニーとアーサーは、偶然知り合ったことでお互いがお互いの傷を癒やして救われた、彼らはもう二度と会わないかもしれないけれど、確かにそこに友情があったのです。
バーニーは言います。「人は事実ではなくハッピーエンドを求める」と。そしてこの映画もハッピーエンドを迎えるわけです。実話ベースであることを知らなかったので、レネがバーニーを待ちきれず亡くなってしまうのではないかとハラハラしました。レネはだいぶ落ち着いていて、老人ホームの職員に冗談を言ったりしていますが、彼女の心のうちはどうだったのでしょう。若い頃のレネは、いつバーニーの訃報が飛び込んでくるかわからず緊張して日々を過ごしていた、というような描写があります。老いたレネにとって、若かった頃に感じていた不安よりも大きな心配事はなかったのかもしれません。
TikTokで(私はTikTokが好きでね……)、70代〜80代くらいの老婆ふたりがテーブルに置かれた大量のお菓子を食べながら「なんとかなるわよ」「そうそう。なんでもやってみたらいいの。だいたいなんとかなるんだから」と話している動画がありました。それを観たとき、生存バイアスじゃないか? と思いましたが、人生、それくらいの軽いノリでやっていったほうが、楽なんだろうとも思います。なんとかなる精神で、やっていきましょう。


