ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ/すべてはいつか、思い出になって

人間ドラマ
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ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

The Holdovers/監督:アレクサンダー・ペイン/2023年/アメリカ

U-NEXTで鑑賞。友人らが口を揃えて「この映画は面白い」「年間ベスト級」と言っていたのに劇場へ足を運べず、年末までにはどこかが配信してくれるといいなと思っていたら、もう来ました、ありがたいU-NEXT、一生ついていきます。第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞しました。

あらすじ:クリスマスなのに家へ帰れません。

ネタバレしています。注意書きはありません。

1970年代の全寮制寄宿学校で教師として働くポール(ポール・ジアマッティ)は、その厳しさゆえに生徒から嫌われていました。


ポールは、クリスマス休暇に家へ帰れない生徒たちの面倒を見ることになるのですが……。

最初、居残り生徒は5人くらいいましたが、各々の事情で寮を離れていきます。結局、残ったのは、問題児のアンガス(ドミニク・セッサ)と、食堂の料理長であるメアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)、そしてポールの3人のみ。ポールは独身、アンガスは母が離婚し、メアリーは息子をベトナム戦争で亡くしていました。立場も性格も考え方も違う3人は、2週間のクリスマス休暇を過ごします。

ポール・ジアマッティは名優ですが、「ポール・ジアマッティ主演だから観よう!」という人たちがいるのかどうかと思うとちょっと微妙かもしれません。主役を張るタイプではないし、フィルモグラフィーを見てもバイプレイヤーとしての活躍が目立ちます。でも、映画をよく観る人たちにとっては「ポール・ジアマッティが出ていると安心する」という人も多いのではないでしょうか。この映画の中で私が最も好きなポール・ジアマッティの仕草は、朝起きて冷たい床に降り、少し歩くときの足の感じです。冷たい床になるべく足の裏をつけないように、指をぎゅっと曲げて足の裏の外側あたりで歩くんですよね。あるある! やるやる! というのと、ポールのどこか憎めないキュートな感じがよく現れているなと思いました。

アンガスは、母親が金持ちと再婚したために家に帰りづらい、という事情があります。いらだちを隠せないアンガスにポールは冷たい態度を取りますが、メアリーから「クリスマスに家へ帰れない子どもの事情もわかってあげてほしい」というようなことを言われるんですね。日本と違ってクリスマスは家族であたたかくお祝いするもので、それが常識の世界では、まだ高校生の子どもが独りにされるなんていうことはありえないんだと思います。そんなアンガスにクリスマスの朝、郵便が届いていました。差出人は母親とその再婚相手です。二つ折りにされたクリスマスカードには、何枚かの紙幣が入っていました。その描写に思うことは、家族というかけがえのないものを金銭で補填することの冷たさです。私は、お金はもちろん大切なものだと思ってはいるけれど、アンガスの両親はあまりにも人の心がないように受け取りました。それはラストで両親がアンガスに会いに来たとき、ポールに言ったことの内容も同じです。自分たちのことしか考えていないなんて。それでも家族と言うのでしょうか。

派手さはまったくなく、堅実な映画だなと思います。この堅実さと俳優陣の安定した演技、思いがけないラストに思うことは、家族というのは各々の役割を家庭内である意味で演じることでなく、どれほど相手を(それがいくら自分に近しい人間であっても、またその逆であっても)思いやれるのかにかかっているように思いました。おすすめです。

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