ウィキッド ふたりの魔女
Wicked/監督:ジョン・M・チュウ/2024年/アメリカ
109シネマズプレミアム新宿 THEATER2 CLASS A G -6で鑑賞。劇団四季版の感想は↓
劇団四季ミュージカル『ウィキッド』/あなたは光の中で生き、わたしは闇の中へ逝く | * FRAGILE
ストーリーはいちおう知っていますが、予告を回避し続けて今日までやってきました。約12年待ちました……。改めて映画として観ると、『オズの魔法使』(1939年)を観ていないとわからないと思われる箇所がけっこうありました。『オズの魔法使』を観てください。
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あらすじ:嫌われ者と人気者のお話です。
※ネタバレしています。『オズの魔法使』のネタバレもあります。注意書きはありません。
西の悪い魔女エルファバ(シンシア・エリヴォ)が死んだとき、北の善い魔女グリンダ(アリアナ・グランデ)は民衆の前で真実を語り始めます。
『オズの魔法使』におけるグリンダ(ビリー・バーク)の描かれ方って、けっこう嫌な感じがあるというか、あの人は別に性根が良いというわけじゃないんですよね。殺人の罪をドロシー(ジュディ・ガーランド)に被せたりするので。ただ、グリンダはそういった自分のあんまり良くないところを自覚しているわけじゃない、わざとじゃないんです。そういう性格の人なんです。それを踏まえての『ウィキッド』のグリンダ(アリアナ・グランデ)ですが、この人が実に人間らしさがあるというか、「こういう行動を取れば、善い人に見えるでしょう」というようなことをね、自分で言っちゃうんです。
グリンダは、才能がなくお金はあって、図々しいが無邪気である人です。人気者になるすべを知っており、ある種の押し付けがましさを持っている……そして、これが一番「人間らしい」と思うのですが、グリンダはエルファバ(シンシア・エリヴォ)に対する嫌悪感を隠しません。差別なんだけどね。おそらく彼女には、親友と呼べる人はいなかったのだろうと思われます。男性に好かれるような立ち居振る舞いはわかっていても、エルファバと仲良くなるまでは、彼女の周囲にいる人間はみんな彼女を持ち上げているだけの人たちですし、彼女はそういう人たちのことをチェスの駒くらいにしか思っていないです。それはグリンダがマンチキンランド出身のボック(イーサン・スレイター)からデートに誘われたとき、はっきり断らずに足の悪いネッサローズ(マリッサ・ボーディ)を押し付けて涼しい顔をしているあたりでも良くわかります。グリンダは「善い人」ではない、ただの一軍女子です。そう、この映画、大学での出来事にだいぶ時間を割いていて、スクールカーストの話でもあるんですよね。
物語はエルファバが死んだところから始まります。グリンダがマンチキンランドの住人らの前で話し始めたとき、その後の展開を知っているのでぼろぼろ泣きました。グリンダは一体どんな気持ちで民衆の前に立ったのか。彼女にとって、おそらくたった一人だったと思われる「親友」の死を喜ぶ人びとの姿を、どんな気持ちで見ていたのか。
劇団四季版の感想にも書きましたが、私は映画版でもエルファバが生まれたシーンからやっぱり大泣きでした。エルファバは不倫でできた子どもだし、最初から望まれていなかったのかと思うとね。才能はあるが他人には忌み嫌われ、父親にも妹にも愛されていない。真面目で勉強熱心で、グリンダに対する嫌悪感を隠さない……エルファバについては、劇団四季版の感想がそのまま映画版でも同じになるので、以下引用します。
エルファバはその外見のため周囲から敬遠される。性格がはっきりしすぎていてまわりに合わせることもしないので余計ハブられるわけです。いっぽうグリンダは、「周囲に愛されること」を第一に考えて行動している。
エルファバは他の人にない魔力を持っており、優等生なのです。グリンダはそこんとこダメ、ぜんぜん。なんにもできない。それでお互いがお互いを「こいつとは合わん! 嫌い!」ってなるんですね。
最初のうちグリンダは本当に嫌な感じですが(1939年の『オズの魔法使』でも嫌な感じがちょいちょい出てた)ダンスホールの、微妙~な空気からだんだんエルファバと親しくなっていく様子がとても良かったです。秘密の打ち明けっこのシーンで、「ネッサローズの脚が悪いのは自分のせいだ」と言うエルファバに対し、グリンダが「それはあなたの責任ではない。そしてあなたにとって秘密かもしれないが事実ではない」と言うところとかすごくグッと来ました。
グリンダ! 良いことを! 言う! グリンダのことを憎めないのは、こういうことを何食わぬ顔で言えちゃうところがあるからです。私の、エルファバに対する気持ちって、もしかしたら同情の側面が大きいかもだけど、グリンダについては今回特に良かったなと。ラストで「幸せになって」ってエルファバに言うところとかもさ、これ、彼女の本心だろうから。グリンダはエルファバに出会ってとても成長したんだろうなって思うんです。そして心からエルファバの幸せを願っている。また冒頭を思い出して泣いちゃうわけですよ、グリンダ、いったいどんな気持ちで……。


