FEMME フェム
Femme/監督:サム・H・フリーマン、ン・チュンピン/2024年/イギリス
マスコミ試写で鑑賞。公開は2025年3月28日です。性描写があるのでR18+に指定されていると思われます。
あらすじ:暴行を受けたので復讐します。
※ネタバレはありません。
ドラァグクイーンのジュールス(ネイサン・スチュアート=ジャレット)は、ある夜、プレストン(ジョージ・マッケイ)と出会います。プレストンから暴力を受けたジュールスは心に傷を負ってしまい……。
3か月後、ゲイ専用サウナ(ハッテンバ?)で偶然プレストンと再会したジュールスでしたが、彼はジュールスのことを覚えていませんでした。自らの性的指向を隠して暮らしているプレストンに復讐しようと思ったジュールスは彼に急接近します。
ジュールスはゲイ向けのポルノサイトを見たりしながらプレストンをどうにかして落とそうとするわけです。プレストンは悪い仲間とルームシェアしており、その家で麻薬の取引などをしていました。絶対にゲイがバレてはいけないプレストンと、決定的な瞬間をカメラにおさめてアウティングをしようとするジュールスのようすにハラハラして観ていました。特に、プレストンの仲間がいるときにジュールスが彼らと話さなければならなくなるシーンはとても怖かったです。ジュールスがどう振る舞えば「正解」なのか、急に誰かが声を荒らげるのではないかと思っていたら、みんなで格闘ゲームやりはじめて仲良く(表面上は)なったので安心するとともに、『ストリートファイター』って本当に人気があるんだな……とも思いました。
予告に「復讐か赦しか」ってあるんですけど、「赦すわけないでしょ、夜道で裸に剥かれて暴行されたのに」って思うじゃないですか。でも私、途中で「あれ? このまま彼らは恋人同士になってしまうのでは?」と思っちゃったんですよね。それはプレストンの中にある欲望や愛情を知ったからで、ジュールスが最後にプレストンに投げかけた言葉とも合致するんです。でも、これもし男女の話だったら、男の方は復讐で殺されていても当然で(『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)みたいにね)どのような事情があれ、他人の心と身体に傷をつけるような行為はけっして許されるものではないです。
そういう意味も含め、とても印象的かつ不思議な感情を掻き立てる映画だったなと思います。すごいバランス感覚の上に成り立っているというか、なんて言ったら良いんだろう……。ちょっと言語化が難しいです。おすすめです。