サンキュー、チャック/この豊かな世界の終わりに

ミステリー
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サンキュー、チャック

The Life of Chuck/監督:マイク・フラナガン/2024年/アメリカ/© 2024 DANCE ANYWAY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

マスコミ試写で鑑賞。2026年5月1日(金)全国ロードショー。先に書いておきますがおすすめです。

あらすじ:地球を大災害が襲います。

ネタバレはありません。

大災害に見舞われ、ネットが使えなくなりSNSも死んでいく中、街のあちこちに「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」という広告だけが増えていきます。

この映画は、「何を書いてもネタバレになるタイプの映画」だと思います。私はこういう映画にしっかり感想を書くのが好きです。繰り返しますがネタバレは書いていないです。

物語は第3章から始まります。主人公は高校教師のキウェテル・イジョフォーで、世界が終わっていくようすを見届ける役どころです。第2章はストリートミュージシャンとチャック(トム・ヒドルストン)の物語、第1章で、物語の核心に触れるというつくりです。第1章に出てくる高校生のチャックがとてもトム・ヒドルストンに似ているので、ずいぶん顔が似ている人を連れてきたなあ……と思いつつ観ていて、ある一瞬の表情でジェイコブ・トレンブレイだ! と気づいたとき、なんだか爽快な気持ちになりました。そもそもの顔が似ているわけではありませんでした。

全体を通してダンスのシーンがとても印象的に描かれており、そのどれもが「人生にこんなに多幸感に溢れた出来事があったとしても、いずれ終わってしまう。何が起きても起きなくても、世界は終わってしまうのだ」ということを表しているようで、とても心に染みました。同時に、第3章で描かれる出来事を思い、「世界が終わることは残酷かもしれないが、それでも美しくあることは出来るんだな」「世界の終わりを目の当たりにしてもなお、静かな気持ちでそれを受け止めることも可能なのだ」とも思います。

私は、私が生きているあいだに世界が終わるとは思っていませんでした。でもパンデミックを経験してから、もしかしたら「ある」かもしれないと思うようになりました。大地震については、日本に住んでいる以上どこへ行っても安全とは言えません。でもパンデミックは予想外すぎたし、個人的にではなく広い意味で「死」が身近になった出来事だったなと思います。私たちにとっての世界が、つまり人間の営みが終わりかけていましたよね。この、実際に起きかけていた「世界の終わり」はまったく美しさを伴わないものでしたが、この映画を観たいま、「最期のきらめきを見せる、世界の終わり」というのも、もしかしたら、あるかもしれないなと思います。

この映画は「終わりの物語」ですが、まったく悲しい話ではなく、自分の残りの人生をいかに生きるかについて思いを馳せるきっかけになる映画だなと思います。そこには哀しみではなく希望があって、観終わるころには自己肯定感が上がっていました。誰もがこのように思うわけではないでしょう。けれど、それぞれの人生を、いつか来る終わりまで精一杯生きていこう、という気持ちになれたら、それは素晴らしいことなのではないかな、と思います。

ベン・スティラーの『LIFE!』(2013年)とティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』(2003年)のことを思い出しました。この2本を好きな方には特におすすめしたい気持ちです。設定やストーリーが似ているわけではありませんが、胸に去来する想いはどこか似ているように感じました。おすすめです。

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