バーナデット ママは行方不明/理解できないこと、理解しようとすること

コメディ
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バーナデット ママは行方不明

Where’d You Go, Bernadette/監督:リチャード・リンクレイター/2019年/アメリカ
© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved. Wilson Webb / Annapurna Pictures

マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年9月22日です。2019年製作の映画なんですね。私はリチャード・リンクレイター監督が好きですが、ビフォアシリーズは観ておらず、一番好きな作品は『スキャナー・ダークリー』(2006年)です。

あらすじ:人間が嫌い。

ネタバレはありません。

専業主婦のバーナデット(ケイト・ブランシェット)は、一流企業に勤める夫エルジー(ビリー・クラダップ)と娘ビー(エマ・ネルソン)、一匹の犬アイスクリームとともに平和に暮らしている。彼女は極度の人間嫌いで、家族以外の人とまともに交流しようとしなかった。そんなある日、ひとつの事件をきっかけに、バーナデットは行方をくらましてしまう。

エキセントリックでありながらも愛情深く(ただし家族に対してのみ)、ユーモアがあり個性的で、どこかいとおしく感じるケイト・ブランシェットと、堅実で冷静、地に足の付いた常識人タイプのビリー・クラダップの対比が面白い。夫婦がそれぞれ別の、信頼できる相手に対して夫婦間で起きていることを話すシーンでは、まるでそれが面白おかしいことかのように若干誇張混じりで話すケイト・ブランシェットと、淡々と、事実と自分のシンプルな気持ちだけを述べるビリー・クラダップという、わかりやすいつくりになっている。

簡潔に言うと「変人」であるバーナデットは、暗い過去を背負っていた。この物語は、彼女が過去を乗り越え、未来へと足を踏み出すために必要だったもの、自分を愛するために乗り越えなければならない困難についてのものである。また、自分のアイデンティティを取り戻す過程についてを描いたのだとも。バーナデットの才能は、他者の気持ちに寄り添うことで開花したのだと思う。それはトイレの件から感じた。創作活動をやめてしまうことによって、彼女の中から他人へ向ける愛情、あるいは純粋な興味が消えてしまったのではないか。

事件によって崩壊しかけた家族は、バーナデットの突飛な行動によって絆を深める。そしてこれは私が最も大切だと感じたことだが、稼ぎが良く一途に自分を愛してくれる伴侶がいても、親友のように接することができ素直な気持ちでいてくれる子供がいても、裕福でなんの心配もない環境にいても、本人が幸せだと感じなければ、何の意味もない。非常にシンプルなことだが、大切だと思う。そして、創作活動をする人(それがどれだけ些細なことであっても)にとって一番輝ける瞬間がどういうときであるかを教えてくれる。

ストーリーや演出などはまったく違うが、なんとなく、ベン・スティラーの『LIFE!』(2013年)に似た手触りがあるな、と思った。なんとなくね。

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