世界のはしっこ、ちいさな教室/学ぶこと、教えること、生きること

ドキュメンタリー、モキュメンタリー
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世界のはしっこ、ちいさな教室

Etre Prof/監督:エミリー・テロン/2021年/フランス
©Winds – France 2 Cinéma – Daisy G. Nichols Productions LLC – Chapka – Vendôme Production

マスコミ試写で鑑賞。2023年7月21日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開。

あらすじ:僻地で授業をします。

ネタバレはありません。

ブルキナファソ、シベリア、バングラデシュのそれぞれで働く3人の教師と児童についてのドキュメンタリーです。
ブルキナファソでは、新人教師が自宅から600キロ離れた僻地の村で6年間、50人の小学生に勉強を教えます。5つの言語が飛び交う村で、教師の話すフランス語を理解出来る児童は1人しかいません。シベリアでは、極寒の地で遊牧民のキャンプを転々としながら教師を続ける女性を追います。また、バングラデシュでは水没した集落に派遣された若い教師が、船で児童たちを迎えに行きます。彼らが学ぶ教室は、この小さな船の中にあります。

教育を受けなければ自立することも難しい生活。教師たちはみな、子供たちが教育を受けることによって、未来を自分で選べるようにしてあげたい、と言うのです。日本で教育を受け、そのおかげでいま、映画を観たり仕事をしたりして勝手気ままに過ごしている私にとって、教師たちの言葉はある種の衝撃でした。世界には未来を選べない子供たちが多くいることや、小学生なのに結婚について考えなくてはならないことなどがとてもつらく感じ、泣いてしまいましたね。

私は今、東南アジア諸国の学校教育に関係する仕事をしています。仕事の中で知る各国の教育の事情や文化などはとても興味深いです。他人に言うことが出来ないので、ぼんやりとした書き方にならざるを得ませんが……。学校に通うことであったり教えることであったりは、生徒と教師どちらの人生も大きく変えていくのだな、と強く思います。

ここから恒例の、自分語りです。

母が妹に「貧乏は遺伝する」と言っていたらしい。私はそのことを直接聞いていないのもあり、なんだそれ? と思っていた。母が言いたかったのは「貧乏だと子どもに教育を受けさせることが出来ないから、そういう意味での貧しさが受け継がれてしまう」ということだったみたい。

父方の祖父が晩年「自分が受けられなかった教育を、子どもには受けさせてやりたかった」と言っており、父方の家は裕福ではなかったが、父を大学まで通わせたことを誇りに思っていたらしい。父が中学の校長になったとき、祖父を校長室の椅子に座らせたら、なんとも嬉しそうな顔をしていたと。

そういう経験をした父なので、私が高校生のとき受験が嫌すぎて「もう家を出ないで市役所とかで働く」と言っていたのを、「大学くらい出なさい」と、就職などにまったく役立たない芸術系の大学に入れてくれた。大学で学んだことはほとんど身についていないが(文芸学科卒で、ものを書く仕事もしているので多少は身についたのかもしれないが、微々たるもの)、祖父から受け継がれた「子どもに教育を受けさせたい」という思いは確実に私を教育的な貧しさから救ったと思う。本当にありがたいことだ。

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