アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者
The Gospel According to Andre/監督:ケイト・ノバック/2017年/アメリカ
マスコミ試写で鑑賞。2022年1月に他界したファッションジャーナリスト、アンドレ・レオン・タリーのドキュメンタリー。公開は2023年3月17日です。
今年のNFLハーフタイムショーでリアーナがトリビュートして話題になった人ですね。あと、『プラダを着た悪魔』(2006年)でのスタンリー・トゥッチのモデルになった人みたい。
あらすじ:生きることとファッションについて。
※ネタバレはありません。
人物に関する多くのドキュメンタリーと同じように、この映画も、アンドレ・レオン・タリーの幼少期から語られます。厳しくて優しいおばあさんとの生活、差別された学生時代。「40歳頃までは痩せてたのにそこから太った」って言い出したときには「めっちゃわかる」ってなりました。私は「わかりたがり」だからね。
アンドレはトントン拍子にファッション業界で力をつけていったようにみえます。何がきっかけでとか、映画を観ていてもわからないんですよ。カール・ラガーフェルドといきなり仲良くなってパリへ行ったりとかするわけ。で、パリでも大成功するんです。
アンドレのことを語る人たちは、彼の幼馴染や高校時代の友人をのぞいて、ほとんどが白人です。黒人モデルもいるけれど、デザイナーや編集者側には黒人はいないんですね。それこそが、彼の存在の大きさの現れであって、彼がファッション業界の大物として目立つことの意義なのかなあとも思います。この構図が、業界の人種差別を表しているのだろうなあとも思うわけです。
さて恒例の自分語りです。私の母は、私を身籠るまで服飾の仕事をしていました。子供の頃は母が作った服を着ていたし、中学や高校の制服は母が作っていました。これは本当に驚くことで、既製品の制服と並べてもまったく違いがわからないんですよ。母は洋服を見にお店へ行って、試着をしたりあちこち細かく見たりしてから、家へ帰って全く同じスーツを仕立てるような人でした。高校生になった私に母は言いました。
「あんたの服装ダサいよ。センスがないの」
私はすごく傷ついて、すごく泣いて、今でも自分はファッションにうとい、オシャレではない人間だと思っています。が、一方でアクセサリーを作って販売しているという今の状況がものすごくおもしろいです。私のセンスを褒めてくれる人がたくさんいるのはとても不思議に思えるし、母はどう感じているんだろうとも思うわけです。どうなんでしょうね。