ヒンターラント/戦争後の悲劇と有害な男らしさ

ミステリー
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ヒンターラント

Hinterland/監督:シュテファン・ルツォヴィツキー/2021年/オーストリア・ルクセンブルク

マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年9月8日です。『ヒトラーの贋札』(2006年)のシュテファン・ルツォヴィツキー監督作です。

あらすじ:戦争が終わった。

ネタバレはありません。

第一次大戦後、収容所生活から解放された元刑事のペーターは行き場を失っていました。あるとき、拷問を受けた痕が残る遺体が発見されます。ペーターは真相を解明しようとするのですが……。

全編ブルーバック撮影で、統一された色味が美しく、ありとあらゆる場所が少し歪んでいるようにも見えます。次々と惨殺されていく被害者たちはみなペーターの元戦友であり、ペーターは収容所内で起きた出来事に基づいて殺人が行われていることを突き止めます。

一見、普通の(普通って何)ミステリーに思えるのですが、監督のコメントによると「有害な男らしさ」をテーマにしているとのこと。戦争は男性が他人に対して自分の力を誇示できる場であり、そんな戦争で敗北したことを恥じ、苦しんでいるわけです。そうしたとき、自分自身にも他人にも攻撃性が向いてしまうのではないか、ということです。このあたり、私はちょっとぴんとこなかったので、分かる方の解説を待ちましょう。

変わってしまった祖国、変わってしまった世界。逃げ出したくても、他に行くあてもない。印象的だったシーンは、初めてジャズを聞いたときのペーターの反応でした。戦前にはなかった音楽が、街で流れていること。ペーターが感じた、「かつてあったものとは確実に異なっている世界」をよく表現されているなと思いました。

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