哀れなるものたち/賢い女に用はない

ファンタジー
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哀れなるものたち

Poor Things/監督:ヨルゴス・ランティモス/2023年/イギリス

TOHOシネマズ新宿 スクリーン5 D-12で鑑賞。実に2か月ぶりの映画館です。やっぱり映画館で映画を観るのは良いね。

あらすじ:胎児の脳を移植する。

ネタバレしています。ネタバレの前には注意書きをしています。

若い女性、ベラ(エマ・ストーン)は橋から飛び降りて入水自殺を図ります。偶然その様子を見ていた天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は、ベラが身ごもっていた胎児の脳を取り出し、ベラ自身に移植するのでした。


ヨルゴス・ランティモス監督の映画は『アルプス』(2011年)と『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017年)以外は観ています。つまり『籠の中の乙女』(2009年)、『ロブスター』(2015年)、『女王陛下のお気に入り』(2018年)ですね。ランティモス作品は少ないから追いやすいけど、『アルプス』の配信がJAIHOだけなの、つらいな。私が一番好きなのは『籠の中の乙女』で、映画オールタイム・ベスト10にも入れました。

第一印象として、世界の感じが『Dr.パルナサスの鏡』(2009年)みたいだなあと。これは友人が言っていたことで正確には私の言葉ではないけれど、納得感があったので書きました。ベラの衣装がすごくかわいいですね。近々イメージアクセサリー作ります。

若い女性の魅力として、外見を挙げられることは少なくないです。というか、多いですね。若く、美しく、頭の悪い女。着飾ってニコニコとし、控えめで、耳当たりのよい言葉しか話さず、決して本心を口に出さない女。男に尽くしセックスがうまく、けれども他の男に触られたことのない女。すみません、今は多様性の話をするときではないので、シスヘテロを対象としています。

女性が精神的にも肉体的にも未熟であることを魅力と捉えるのは、身勝手だし醜いです。ただ、セックスには知性も愛情も必要ありませんから、若い女性をモノとして性的に消費することは今までも多くあったし、これからもあるでしょう。このあたりはまだ世界的にも過渡期であるゆえに、この映画のようなテーマをもつ作品が多く出てきているところですよね。もう少し具体的にはっきり言うと、私が観た中で一番最近の、同じテーマをもつ作品は『バービー』(2023年)です。

※以下、ネタバレしています。

ネタバレ前にクッションとして1つポストはさみますね。


ベラはパリで経済的に困窮し、娼館で働くことを選びます。ここで彼女はみずから「商品」となり、その身体を様々な男たちに提供するわけです。ベラは「女が男を選んだほうが良いのでは」というようなことを言います。ちょっと正確なセリフを覚えておらずすみません。このセリフも、メッセージとしてものすごくわかりやすいですね。わかりやすすぎて驚きさえありました。

私は他の人の感想を読んでから自分の感想を書くことを嫌っているため、他の人たちがどういうふうに受け止めているのかは知りませんが、ここまできっぱり言い放っていることだから、まあみんな同じことを感じたのではないかなと。

この映画はたいへん性描写が多く、エマ・ストーンの自慰や性交のシーンが全体の4分の1、は大げさか、ともかくしょっちゅう脱いでセックスしていました。一昔前であったら「体当たりの演技」と言われただろうなと思います。彼女の裸にしか興味を持てなかった、という人もいるかもしれませんね。

ヨルゴス・ランティモスは、今まで観た限りだと、ラストを観客の解釈に委ねるのを好む人なのかなと思っていたため、解釈の余地なくきっぱり終わったことにも驚きました。今作はわかりやすさ重視なのかな。要するに、女性の自立についての物語です。ちょっと最近の流行りに乗っているように見えてしまいました。こういうテーマの映画が大切なのは重々承知の上だし、世界を変えていく一歩だとも思うのですが、私にとって映画は娯楽であり勉強ではないので、類似する作品がずっと続くと、お腹壊しそうです。

ラストはトッド・ブラウニング監督の『怪物圑』(1932年)ですね。U-NEXTで配信中(見放題)です。ショッキングな内容ですが、素晴らしい映画なのでぜひ。

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