トランスフュージョン/ヤバいヤマほどバックはデカい

クライム
この記事は約2分で読めます。

トランスフュージョン

Transfusion/監督:マット・ネイブル/2022年/オーストラリア

マスコミ試写で鑑賞。公開は2024年5月10日です。サム・ワーシントン久しぶりに見ました。

あらすじ:退役軍人が苦しみます。

ネタバレはありません。

元特殊部隊のライアン(サム・ワーシントン)は、最愛の妻を事故で亡くしてしまいます。まだ幼かった息子ビリーを育てるため退役せざるを得なかったライアンですが、なかなか定職につくことができませんでした。


子供の頃から内向的な性格だったビリーは自分の置かれた環境に馴染むことができず、トラブルを起こしがちな10代へ育ってしまいます。そんな折、かつての同僚であるジョニーと再会したライアンは、彼が請け負っている非合法な仕事に誘われ……。

「元軍人で今は普通のおじさんが、子供のためにかつての能力を活かして大暴れ!」みたいな、『96時間』(2008年)のヒットを受けて乱発されたタイプのアクション映画かなと思って観たところ、予想していたのとかなり雰囲気が違いました(アクション映画と言うにはアクションは少ないです。なので、ジャンルは「クライム」にしましたよ)。こういう意外性って大好きですね。映画を観るのなら今まで観たことのないようなものを観たいです。もちろん、王道には王道の良さがあるのはわかったうえでの話です。王道もおいしいけど変わり種もおいしい!

ずっと、どこか寂しさを覚えるような静かな音楽が流れているんです。それはライアンの喪失感を表すものだと思うし、同時にビリーの孤独感も表しています。幼くして母親を失った子供は、自分のために退役せざるを得なかった父親に対してどういう思いを抱え込むのか。なんとかして息子のために働こうと思っている父親は、自分にはまったく向いていない仕事をしなければならない現実とどう折り合いをつけるのか。もとを正せばすべて戦争のせいで、でもそれは、個人ではどうしようもないことなんですよね。

戦争が個人に残したものは、人を殺す方法なんだと思うととてもやるせないです。優れた軍人であることにアイデンティティがあったと思われるライアンは、銃を置いて日常を過ごそうというとき、「この世界には自分の居場所がなく、自分はなんの役にも立たない人間なのだ」という現実を突きつけられてしまい、心に傷を負ってしまうんです。表層としては犯罪映画ですが、戦争の虚しさが描かれている作品だなと思いました。

タイトルとURLをコピーしました