ソフト/クワイエット/そっと、静かに、あなたのそばに

スリラー
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ソフト/クワイエット

Soft & Quiet/監督:ベス・デ・アラウージョ/2022年/アメリカ

マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年5月19日です。全編ワンショット&リアルタイム進行。
なんでこんなポスターなのかな、ホラー映画っぽいよね。日本版のポスターもホラー映画みたい。

あらすじ:差別主義者が集まります。

ネタバレはありません。

始まって3分くらいで、あっ、この映画すごいかも! って思いましたね。それは撮り方で、ワンショットでリアルタイムなのは知っていたけれど、一人の人を追ってたと思ったら別の人を追い、ああ、対象が切り替わるんだって思った瞬間にまた別の人を追って、最後の人が遠ざかっていったところへ最初の人が現れるという。しょっぱなからぐっと引きつけてくるものがあります。で、始まって5分くらいで、最初の人のことを「なんだこいつは」って思わせるんですよ。さらに8分ほど経つと、最初の人のあまりのヤバさに大笑いしてしまいました(オンライン試写で良かった、笑いすぎたもん。あのシーンで笑うのあんまりお上品じゃない)。

白人至上主義者の6人の女性が会合を開き、さんざん有色人種やフェミニストなどの悪口を言い合ったあと、主催のエミリー(ステファニー・エステス)の家へ行くことに。途中、仲間のうちの一人が経営している店へ寄ったところ、ちょっとしたことからアジア系の女性客と口論になってしまう。頭に血が上ったエミリーたちは、遊び半分で女性の家を荒らしに行くのだが……。


これすごいです。ネタバレしたくないのであんまり書けないですが、とんでもないものを観てしまいました。指定がGなんですけど、かなりショッキングなシーンが続くので、暴力が苦手な人は避けたほうがいいかもしれません。私は映画の中の暴力だったら、作り物とわかっていればそんなにショックを受けない方ですが、最初のうち笑って観ていたのが中盤から完全に真顔になってしまいましたね。本当にひどい暴力シーンは画面に映るわけではないんですが、何をしているのか容易に想像できちゃうので。

観終わったあと本当に呆然としてしまって。手が震えます。雑なくくりをすると、これは胸糞映画かも。だから、みんなに広くおすすめ! っていうわけにはいかないかな……。ほんの少しだけ希望が残されるけれど、本当にほんの少しで。気持ちが傷つきやすいと自覚している人はちょっと覚悟したほうがいいと思います。

エミリーとその仲間たちは、人種差別が悪いことだとはなんとなくわかっているみたい。みたい、って書くのは、差別していることについて口に出すとき、いちおう躊躇うからです。でも一応でしかないな。あと、この人たち、ものすごく口が悪いです。私たちは優れた人種なの、仲間なのよと言いながら、同じ口でこのクソ女! と罵り合ったり、仲間のひとりがその場を離れたら、すぐその離れた人の悪口言いだしたりして、嫌な感じよ。ヘイトでつながった仲間なんて、そんなものかもしれません。

差別主義者ってわりとそのへんにいると思っていて、でも、ふつう隠すじゃないですか。インターネット上だと隠さない人もいるから、流れてきた差別ツイートを何の気なしに見てギョッとしたりします。ひどい差別をしている人たちが、ふつうの顔をして、しれっとそのへんにいる。気づかないうちに、私たちの隣にいる。人種差別だけじゃないですよね、ありとあらゆる差別がこの世界にはうずまいている。私は自分が差別をしてないと思っているけれど、そう思っているのは自分に見えている世界が狭いだけで、視野を広くしてみたら、本当は差別をしているかもしれない。私がこの映画を見て一番おそろしいと思ったのは、もしかしたら自分の中にあるかもしれない、他人を差別する心です。


監督はベス・デ・アラウージョ。今作が長編デビュー作です。母親が中国系アメリカ人、父親がブラジル出身。

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