ナチスに仕掛けたチェスゲーム/戦争の爪痕

サスペンス
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ナチスに仕掛けたチェスゲーム

Schachnovelle/監督:フィリップ・シュテルツェル/2021年/ドイツ
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マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年7月21日です。主演のオリヴァー・マスッチは『帰ってきたヒトラー』(2015年)でヒトラーを演じて一躍有名になった人ですね。たしか元々舞台俳優で、役者としてあまり顔が知られていなかったため、ヒトラー役に抜擢されたとか。

あらすじ:ナチスに監禁されます。

ネタバレはありません。

ヨーゼフ(オリヴァー・マスッチ)は、再会した妻とともにロッテルダム港からアメリカへ行く豪華客船に乗っていた。かつて公証人だったヨーゼフは、オーストリアを併合したナチスドイツに資産を奪われそうになるも拒否したため、ホテルに監禁されたという過去があった。豪華客船ではチェスの大会がひらかれ、世界王者が乗客らとチェスに興じていた。世界王者と豪華客船のオーナーとの一戦で、オーナーにアドバイスをしたヨーゼフだったが……。

このあたりの時代感は映画でしか知らないので(歴史の勉強が苦手でした)、国と国の関係やオーストリアがどういう道を辿っていたかなどがわかっていないのですが、歴史に詳しくなくても観られるようになっています。映画を観る人みんながみんな、ナチスドイツに詳しいわけじゃないしね……。とても優しいし易しいですね。ありがたい。

ヨーゼフはチェスが強いわけですが、オーナーにアドバイスをしたときに初めてチェスの駒に触ったと言います。
さて、いったい彼は過去に何があったのでしょうか、というお話です。

現在パートでヨーゼフは妻とともに豪華客船に乗っているため、ホテルでの監禁状態からは抜け出せたんだなということは容易にわかります。監禁されていたのがホテルであるせいか、あんまりつらくないのではと思ってしまうのですが、そこは相手がナチスです、いろんなことがありますよね。映画で起きる悲惨な出来事に私たちは慣れすぎてしまって、場所がホテルだろうが強制収容所だろうが自分の自由がないのは信じられないくらいしんどいんだ、ということを忘れがちな気もします。

物語が動くのは基本的にホテルの中か海の上で、画面の色味がそのどちらにいても若干彩度が低いので、たまに「あれ、今どっちなんだっけ」ってなる瞬間がありました。結構巧妙に過去と現在を行き来するんですよね。それが、ヨーゼフの混乱具合を表しているようで良かったです。お話としては全体的にしんどい。ラストもけっこうしんどいたぐいのものです。邦題で予想する話とは違いました。爽快感はないですが、うなだれるにはおすすめです。

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