栗の森のものがたり/忘れられた村、忘れられないひと

人間ドラマ
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栗の森のものがたり

Zgodbe iz kostanjevih gozdov/監督:グレゴル・ボジッチ/2019年/スロヴェニア

マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年10月7日です。スロヴェニアの映画って初めて!

あらすじ:国境地帯の村で……。

ネタバレはありません。

旧ユーゴのスロヴェニアとイタリアの国境地帯、”栗の地”。年老いた大工マリオは息子からの連絡を待ちつづけていた。一方、栗売りのマルタは、戦争から戻ってこない夫の身を案じていた。

大自然の形、雲や落ち葉、木漏れ日の美しさ、澄んだ川。もう何千年もそこにあるようで、これから何千年もそこにあり続けるように思える。光と影のかたちで浮かび上がる神の気まぐれは、ときに私たちを遠くの地へ連れて行ってくれる。素朴な作りの家の寒々とした部屋には木製の家具が置かれ、ランタンの火はゆらめき、静謐とした時間がゆっくりと流れていく。窓から差し込むやわらかい光は、部屋の中をそっと照らし出す。いかにも照明というようなベタっとした強い光ではなく、自然が作り出した静かな光。そして光のあるところに必ず出来る影は、登場人物たちの佇まいを、やりすぎることなく強調している。登る陽の光に合わせて撮られた食器や花、果物などは、まるで静物画を見ているかのよう。監督は、レンブラントやフェルメールなどのオランダ印象派の絵画から影響を受けたようす。

中盤まで、てっきり「ちょっと昔」が舞台なのかと思っていたら、完全に時代を特定できるわけではないものの、比較的現代に近いときが設定されているとわかって少し驚いた。それくらい、自然に寄り添って生きている人たちを描いている。この世界はもしかしたらスマホもあるのではないだろうか。あっても使わないと思うけれど。

物語を楽しむというよりは、映像美を楽しむ映画なのかなと思う。物語は絵本のようで、映像は絵画のような作品だった。

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