ファーザー/喜びも悲しみも、思い出さえも

人間ドラマ
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ファーザー

The Father/監督:フロリアン・ゼレール/2020年/イギリス・フランス

こちらの記事は、2021年に書いた ファーザー/喜びも悲しみも、思い出さえも | 映画感想 * FRAGILE を転載したものです。

マスコミ試写で鑑賞。

あらすじ:認知症です

ネタバレしています。注意書きはありません。


もしアカデミー賞主演男優賞とったら、『羊たちの沈黙』(1991年)以来ということで、これはぜひとってほしい、というか、とると思う。ものすごく自然な演技がすばらしい。まさに名優という言葉がぴったりだった。


アンソニー・ホプキンスが脚本通りに演技する人というのはどこかで読んで、「デニーロアプローチとかよくわかんない、演技すればいいだけじゃないか」、みたいなことを言っていたのも昔見たことがある。別にアンソニー・ホプキンスロバート・デ・ニーロを嫌いなわけではないとは思う。

脚本が当て書きなだけでなく、役名もアンソニーだし、生年月日も本人のものをそのまま使われている。間違いなく、アンソニー・ホプキンス出演作のなかでも特に秀でた作品である。

脚本や演技がよいだけでなく、演出も非常によくて、アンソニー・ホプキンスの戸惑いと混乱を追体験できるようになっている。娘はパリに引っ越すと言ったり、そんなこと言ってないと言ったりする。誰だかわからない男性が娘と親しげにしており、夫かとおもいきや離婚したはずだったり、また別の男性が同じように娘と親しげに現れたりする。お前はいったい誰なんだ、名乗られてもすぐにはわからないし、観客にもそれはわからない。似たような会話が繰り返され、時間を聞けばいつも8時(最初に一度だけ5時だったが、あとはずっと8時である)、アンソニーが住んでいる家も、誰の家なのかわからない。下の娘は画家で、まったく会いに来ない。そんなアンソニーが、最後に「(ある人に)会いたい」と言う、ここが本当に心にぐっさり来た。助けて欲しいのだ、もう何もわからなくなってしまった、こんな自分を助けてくれるのは、あの人しかいないのに。

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