銀河鉄道の父/人の親というもの

人間ドラマ
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銀河鉄道の父

監督:成島出/2023年/日本

マスコミ試写で鑑賞。義務教育で習う以上の宮沢賢治について私は一切知りません。『銀河鉄道の夜』は未読。公開は2023年5月5日(金・祝)です。

あらすじ:宮沢賢治が生まれました。

ネタバレはありません。

質屋を営む父の宮沢政次郎(役所広司)のところに宮沢賢治(菅田将暉)が生まれました。質屋を継がせたい父と、学問の道に行きたい賢治は、事あるごとに反発しあっていました。家族から説得され、賢治が学校へ通うことを許した父でしたが、賢治はすぐに学校を辞め、人工宝石を作りたいと言い出したり、宗教に傾倒したりしはじめます。

そうしているうち、賢治の妹・トシ(森七菜)が結核に罹ってしまったことをきっかけに、賢治は筆を執ることになりますが……。

私は人の親ではないので、親目線の物語に完全に没入することは難しいのかなと常々思っています。成島出監督作は『ファミリア』(2022年)と『八日目の蝉』(2011年)しか観ておらず、奇しくも2作ともテーマが「疑似家族」でした。今作は血の繋がりのある家族ということで、なにか違うかなと思いましたが、観終わって思うことには「家族というものに、血の繋がりがあるかないかは関係ないんだな」ということですね。生活の深いところにいる、ひとまとまりの集団が「家族」と呼ばれるのかな、とか。生活をともにすることが大切なのではないかなと。そう言ってしまうと、親元を離れた子(私もそうですが)は、家族でなくなるのか? と言われそうではあります。私にとって家族は、つかみどころのない不思議な関係であって、一言にこうであると言うことはとても難しいです。

宮沢賢治と自分を同列に扱うわけではありませんが、私の父は私が本を出版したとき大喜びし、書店で私の本をたくさん買って人に配ったり、過去に付き合いのあった人などに私の本についての手紙を書いたりしたと聞きました。私は幼いころから育てづらく親不幸な子供でしたが、2016年のあのときだけは、両親に対して孝行できたのかなとも思うわけです。まあその後何年かして、両親からの信頼をなくす行動をとったために、今は両親にとって私は恥ずべき存在になっているのではないかとも思いますが……。

話を映画に戻します。賢治の母・イチ(坂井真紀)の出番が極端に少なく、父親と息子の物語だから当然か、という気持ちと、いくらなんでもここまで排除しなくてもいいのでは? という気持ちがありましたが、後半になってイチが「私は賢さんの母親だから」と言うシーンのおかげで、ホッとしましたね。この辺はバランス感覚の問題になるのかなとも思います。フィクションであれば母親を排除することはかんたんですが、一応実話ベースなので、そこにいる人を排除するやり方がまずいと、最初私が思ったように「これはよくないのでは?」となってしまいますから……。小さなことだけれど大切だと思います。

クライマックスについてはね、これは泣かせに来ている、演出からなにからすべて、監督が「観客にこう観てほしい」と考えたであろうやり方で泣かせに来ます。この感じ、去年観た『ロストケア』(2023年)の中盤の柄本明に近いものがあります。こんなの泣くでしょ……。役所広司勝ちですわ。

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