ジュリア(s)
Julia(s)/監督:オリビエ・トレイナー/2022年/フランス
マスコミ試写で鑑賞。公開は2023年5月5日です。
あらすじ:ピアニストを目指します。
※ネタバレはありません。
ピアニストを目指すジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)。彼女が下した些細な選択や偶然により、パリ、アムステルダム、ベルリン、ニューヨーク、それぞれの街で人生が分岐していくようすを描いた人間ドラマです。分岐していくことを知らずに観ると、ちょっとわかりにくく映るかもしれません。私も最初戸惑いました。ジュリア(a)がベルリンでクラブにいるとき、ジュリア(b)もパリでクラブにいたりして、カットは割られるけれど特別に説明があるわけでもないので。ただこれは、10分くらいで慣れます。
どの時点でどう分岐したジュリアが、いま、どんな人生の選択をしているのか、というのがわからなくなるのですが、これはもうわからなくて仕方ない、なぜなら分岐の数がめちゃ多く、どのジュリアが「主人公」なのかというのも特にないからです。幸せになるジュリアもいれば、不幸になっていくジュリアもいる。けれど、幸せの絶頂からどん底へ突き落とされたり、逆にどん底から這い上がってくるジュリアもいる。これがすごく面白いですね。本当に人生は、何がきっかけでどう動くのか予測がつかないので……。そういう物語の中にいるポール(ラファエル・ペルソナス)は、偶然を数学的に分析する、みたいな研究をやっていて、それで仕事をもらったりするわけです。
別れ、出会い、あるときは再会し、裏切られ、涙を流し、人を傷つけ、傷つけられながら生きていく。「もしあのとき」という思いがあったとしても、人生をやり直すことはできないし、後悔は何も生み出さないかもしれません。
ヒプノシスマイクに『Stella』という曲があります。歌詞を一部引用します。
爪先は前に向けておく
立ち止まった次の一歩目でも間違えないように
爪先は前に向けておく
ただ一途な目でいつか過ちすら愛でよう
いい曲なので公式の動画も載せておきます(今回の記事タイトル部分も『Stella』の引用です)。
『Stella』には明確にストーリーがあるので、突然引用しても「?」かもしれませんが、上で引用した歌詞がとても合う映画だなと思いましたよ。おすすめです。